アタシは他国の戦巫女と力を合わせて、魔王の城に乗り込む事にした。
山川幾千里越えていった。訳じゃない。アタシには、場所を移動する能力もそなわっていたから、皆を連れて、北の地へ! で、ハイ一瞬で北の地にご到着、だった。
とはいえ、向こうさんも戦巫女の襲来を警戒して準備は万端。手厚い出迎えを受けた訳。
一人ででも魔王の元に辿り着く為に、一人、また一人と、戦巫女が減っていく。アタシは結局一人で、魔王の部屋の前に立っていた。
緊張? したよ、そりゃ。前回ボロクソに負けてるし、向こうはあいつを楯にして何をしてくるかわからない。ヒーロー並のヒロインになってやるとは決心したけど、実際魔王をもう一度前にしたらどうなるかなんて、わからなかった。
一度、二度、深呼吸。扉を開けたアタシの視界に入って来たのは、玉座にかけてニヤニヤしている、第一王子の顔した魔王と。
血塗れになってうつ伏せに倒れている、あいつの姿だった。
一人ででも、魔王を倒そうとして、返り討ちに遭ったらしい。兄貴の顔した魔王にほだされて、心臓に一撃。即死だった。
アタシは呆然として。でもその後に、とんでもない怒りがふつふつと腹の底から湧いてくるのがわかった。どこまでも、どこまでも、卑怯な奴。許さない、って。
その前に、あいつの傍に屈み込んで、そっと手をかざした。アタシの銀色の戦巫女の能力なら、死人を生き返らせる事もできるんじゃないかって。
でも、無理だよね。命は二度授かるものじゃないって言ったの、あいつだもんね。
そう、見切りをつけて。
魔王を振り返って、これ以上できないってくらいにガンたれて。アタシは乙女にあるまじき一言を言い放った。
「ブッ飛ばす」
後は宣言通りよ。アタシは魔王をブッ飛ばした。
魔王は相変わらず強かったけど、二度目でパターンが大体読めてたし、何より、心底怒ってて本気モードのアタシの敵じゃなかった。ぶっ叩いたら、第一王子の身体から魔王の本体が弾き出されて、ごろごろ床を転がった。
それを見た瞬間、アタシの怒りに更に火が付いたよ。だって奴の顔、アタシを振ったあの男にそっくりだったんだもの。これは腹いせをしなくちゃおさまらない。それはもう滅多打ち。恐い? うん、自分の子供達には見せられないね、あの時のアタシの顔は。それはそれはもう、怒りながら笑ってるの、自覚してたから。
もうとにかくめっためたにされて、魔王はひいひい這いつくばりながら命乞いを始めたのよ。もう人間世界を攻めないから、勘弁してくれって。
その時アタシは、一瞬躊躇っちゃったのよね。あの男に言われてるみたいで。もう諦めつけたはずなのに、感傷に襲われて。でもそれは、アタシを油断させるための奴の策だった。にやりと笑って、アタシに攻撃を加えようとした、その時。
あいつが、剣を振りかざして走り込んで来た。
生きてる。動いてる。喋ってる。
アタシが唖然とする間に、あいつは剣で深々と魔王の心臓を貫いて、アタシを見た。とどめを刺せって。
「余を倒しても、悪は消えはせぬ。いや、人間の中から悪が現れて、自ら滅びゆくかもしれんぞ」
魔王の負け惜しみ。だからアタシは、銀の斧を振りかざしながら言ってやった。
「その時は、その時代の戦巫女がそれを倒す。負けないよ」
って。
斧が振り下ろされて、デア・セドルは完全に消滅した。