シロツメクサの指輪はプラチナにはならない


「わたし、眞ちゃんのお嫁さんになるの!」

 シロツメクサの咲き誇る川岸で、二人で追いかけっこをした後。
 幼馴染の風花ふうかは、花の冠を編みながら、満面の笑みを閃かせた。

「真っ白いドレスを着て、真っ白いお花を持って。指輪は眞ちゃんと一緒に選んだものを、交換こね」

 無邪気に喋りながら、ちいさな手が、せっせと冠を作り上げてゆく。
 幼い夢だと笑い飛ばすこともできただろう。
 だけど、僕はそうするほどには大きくなくて。風花に対して心の中で抱いている気持ちも、僕らを照らす太陽のように明るいものだったから。
 笑顔を返してシロツメクサを一輪手に取り、茎で輪っかを作ると、風花の幼い手を取って、左薬指に通した。

「約束するよ」

 目をまん丸くして、シロツメクサの指輪を見つめる風花に、僕は宣言する。

「僕は風花をお嫁さんにする。他の誰も選ばない」

 途端、驚きに満ちていた風花の顔は、ぱっと輝いて。

「絶対! 絶対だよ! 約束!」

 まだ完全にはできあがっていない冠を僕の頭にかぶせると、強引に僕の手をつかんで、指切りをした。

 あれから月日は流れて。

 風花は今、僕の前で、真っ白いドレスをまとい、白いブーケを持って、この場にいる誰よりも、晴れ晴れとした綺麗な表情で立っている。
 だけど、指輪は僕と一緒に選んだものではなくて。
 他の誰かと肩を寄せ合って選んだ、プラチナの指輪を、左の薬指にはめている。

「眞ちゃん」

 世界一幸福そうに笑いながら、風花は目を潤ませて、紅を差したくちびるを持ち上げる。

「わたし、幸せになるから」

 ああ、あの日の約束を、君はもう忘れたのかな。それとも、覚えていてなお、他の相手を選んだのかな。
 訊くのは意地悪だ。
 冠の思い出を過去にして、僕も精一杯破顔する。

「結婚おめでとう、風花」

 ちゃんと笑えていたかどうかは、自分でもわからない。
 シロツメクサの指輪では彼女の心をつかまえておけなかった悔恨は、この先僕が別の誰かに指輪を贈ったとしても、いつまでも残るだろう。