第5章:お前もアミクスにならないか?(1)


 大変よ、ロザリー!
 王子様と一緒に歩いている貴族の女性がいたの! とてもきれいで、王子様もお話ししていて楽しそうで。
 やはり、わたくしみたいになんの取り柄もない姫が、あのお方と釣り合うはずがなかったのね。
 え? お化粧? おしゃれ?
 あなたの知識で極めれば、王子様を振り向かせられるの!?


 しとしとと。体を冷やす雨が降り続ける六月に、會場奈津里は登校してきた。
「おはよう! 千春くん、紅葉ちゃん!」
 病弱で幸薄そうな見た目はどこへやら。外のじめじめした天気を吹き飛ばす太陽のように明るい笑顔で、奈津里は千春たちに元気なあいさつを送る。
「おー、澤森、周防。空き教室から机と椅子一式持ってこい。で、周防の隣な」
『かに座のカルキノス』の正体を明かしてからも、千春たちのクラス担任として、何事もなかったかのようにふるまう室淵の指示で、千春と紅葉は、奈津里の分の机と椅子を取りに向かった。
「こういうのって普通、前日に担任が用意しとくもんじゃないの?」
 紅葉はぶうぶう文句をたれながらも、しっかり椅子を確保する。まあ、いくら千春の線が細いと言っても、紅葉よりは腕力がある。机を持ち、教室に戻った。
「ありがとう、二人とも」
 ストレートの長い髪をひとつのみつあみにした奈津里は、清潔感にあふれる印象まぶしく、笑みを見せた。
 三人がそれぞれの席におさまると、室淵はいつも通り、だらだらした口調でホームルームを始める。
 だが、それがいつもと違うのは、終わり際に、
「あー、澤森、周防、會場」
 と、千春たち三人を名指ししてきたことだった。
「お前ら放課後、視聴覚室に集合な」
 思わず三人で顔を見合わせてしまう。室淵が千春と紅葉を呼び出すことはわかる。政府の『リベルタ機関』とやらから、なにか知らせがあるのかもしれない。そもそも、一ヶ月も魔法少女たちを放っておいて、今さらという気もするが。
 だけど、どうして奈津里も呼ばれるのだろう。千春が首をかしげると。
「あっ、あのね」
 奈津里が声をひそめて、でも、嬉しさをおさえきれない様子で、とっておきの秘密を打ち明けるように告げた。
「わたしもあるみたいなの。魔法少女になる素質」