フェルナンド?
何してんのよ。
笑い顔を作ろうとしたけど、頬の筋肉がカッチカチに固まっていた。
「大した男だったよ、フォルティアの王子は」
デア・セドルの声がどこか遠く聞こえる。
「余に刃向かって来た。お前達を危険な目に遭わせる訳にはいかない、自分がケリをつけるとな。だからわざと追い詰められたふりをして、言ってやったのだ、この顔で」
途端に、デア・セドルの表情が、怯えたフォレストのものにすり替わる。
「やめてくれ、フェルナンド! 血を分けた兄弟だろう!?」
そして再びデア・セドルに戻って、哄笑。
「……とな! 所詮人間だ、情に流され怯んだ所を」
バン。
デア・セドルが魔法を撃つ真似をする。
「余は優しいのだよ。心臓を一撃だ。苦しまずに死んだだろう」
――死んだ?
フェルナンドが?
殺しても死ななそうな、こいつが?
死んだフリでもしてるんじゃないかという考えが、脳裏を巡った。
フェルナンド、
起きなよ。
起きて、喋りかけてよ。
いつもみたいに、眉間にシワ寄せて、イジワル言ってよ。
……笑って、よ。
「フェル兄様……」
リーティアがフラリと膝をついて、フェルナンドを仰向けにしようとする。
「――見ない!!」
反射的にアタシは叫んでいた。リーティアがビクっと手を引っ込める。
顔を見てしまったら、こいつの死を認めて、泣き出しそうだったから。
アタシは、顔の見えないフェルナンドのかたわらにかがみこんで、右手をかざした。
戦巫女には、回復魔法に長けた者もいたという。
ならアタシにもその力があるんじゃないかと、淡い期待を抱いて。
でも。
生き返るワケ、ないよね。
命は二度授かるものじゃないって言ったの、こいつだものね。
銀色の光が、フェルナンドに吸い込まれ、頼りなく消えるのを見届けて、アタシはゆっくりと立ち上がる。
肩越しに振り向けば、デア・セドルは頬杖をついてニヤニヤとこちらを見ていた。
頭のどこかには、やけに冷静な自分がいる。
だが、顔はきっと、ものすごい形相してるだろう。
これ以上できないってくらいガンたれて。
自分に出せる限りの低い声で。
アタシは、乙女にあるまじき台詞を、デア・セドルに叩きつけた。
「ブッ飛ばす」