エピローグ


「……今夜はここまでにしましょうか」
 しょぼしょぼと眠そうに目をこする幼い我が子に、母親が苦笑を向けると、幼児は「や!」と半眼ながらも食らいついてきた。
「さいごいまできく! りゅうのおひめさま、どうなったの?」
 この知識欲は父親そっくりだ。可笑しさがこみ上げてぷっと吹き出すと、「はやく!」と子供はぽこぽこ拳を母親の胸に叩きつけた。子供の手なので、威力は全く無いが。
「私達がこうして毎晩お布団に入って眠れるのは、何故でしょう?」
 なぞなぞのような問いかけに、子供はしばし眉根を寄せて唸っていたが、ある瞬間に、ぱっと笑顔を弾けさせた。
「おひめさま、きゅーしんにかったんだ!」
「そう」
 きゃっきゃと手を打ち合わせる子に、母親は優しい笑みと共にうなずいてみせる。
 白き竜獣(ドラゴン)となった少女は、激闘の末、旧神を打ち倒し、永遠に滅ぼした。そして幼い頃の約束通り、蛇公国(スネイク)の新王の后となって、青い瞳の王女と赤い瞳の王子の双子を産んだ。
 国王の施政は強固で、しかし優しく民に降り注ぎ、人と竜の架け橋となった国王夫妻は、大陸の各地に少数だが未だ生き延びている竜族を手厚く保護した。
 竜の少女の叔父や、旅の仲間達も、それぞれに安寧を得て、穏やかに暮らしている。蛇公国(スネイク)はその鎌首をもたげる事無く、今も平和が続いているのだ。
 母親は思い出す。全てを失って、研がれていない刃のようにぼろぼろだった少女が、凜と輝く鋭き剣となって、世界を救ったあの日を。あの時、あの場所に居合わせた事に、幸運と栄誉を覚える。目蓋を閉じれば、白き竜に貫かれた旧神が崩れ落ちてゆく光景が、今もまらうらに焼き付いている。
 すうすうと、穏やかな息が聞こえてきたので、目を開く。結末を知って満足した我が子は、安心して眠りに落ちたようだ。
 願わくば、この平穏が永く続くように。竜(ドラゴン)と蛇(スネイク)の伝説(サーガ)が、永久に語り継がれるように。
 温もりを胸に抱きながら、彼女も眠気の精に誘われて、再び目を閉じるのであった。



 壮大な音楽と共に美麗なCGムービーが……ではなく、シンセサイザーの曲と共にドット絵の画面で、スタッフロールが流れ始める。
『ドラゴン・スネイク・サーガ』
 二昔前どころか今は亡きファ○コン時代のようなタイトルだが、原作者の性癖が詰め込まれた一作として、一部マニアの間で(ネタとして)話題らしいというので、プレイしてみた。
 まあ、原作者が懐古好きだという事はよくわかった。
 評価は……人それぞれという事で、これは私一人の胸に仕舞っておこう。
 そう思った所でスタッフロールも終わり、

 The end.

 の文字が画面真ん中で止まって、曲の終わりに合わせて、フェードアウトしていった。