サンプル02:スイッチオアプレイオアアンコントローラブル(紙箱みど)


 そこにはぽつねんと、謎の箱が置かれていた。
 記載してある文字は読めず、しかしその外箱には楽しそうな姿がいくつも映り、中身がとにかく楽しそう、だということを告げている。それ以上でもそれ以下でもない。
「何これ」
「さあ……俺様が来た時にはもうあった」
「すぐ開けない理性はあったんスね」
 ぞろぞろと集う霧航士ミストノートたち。その部屋――まあ、談話室の中心のテーブルに、その箱は置かれていた。
 謎の箱。成人男性が持つには十二分に小さく、そして言うほど厚くもない。要するに手頃なサイズというわけだ。中身を推察するには記載されている文字が読めず、ただ外側の楽しそうな絵を眺めている以外になかった。
「……ふうむ……今日の安楽椅子探偵はそれについてかな?」
「うわっ」
「そいつに向かってうわっとか言うより、ヌッと現れるのをやめて欲しいよな、正直引く」
「ボクに対して辛辣すぎない?」
 無音で現れた五人目を視認して、思慮していたユージーンはその手を解いた。この箱は彼がこの部屋に到着したときからあったもので、そして誰かが持ち込んだわけでもない――らしい。ただそこに存在していて、そして厳重に封がされているわけでもなかった。どこかなんとなくケーキの箱を彷彿とさせて、それはそこに存在している。
 不審物として突き出すのが最も早かったが、外装を見る限りでそうは思えなかった、とジーンは言った。何よりそれだけをこんなところに置くのなら、もっと効率のいいところがあるでしょう、とアーサーは言った。何も言わずにオズワルドが頷き、ゲイルとトレヴァーは視線を合わせた。
「……ふむ。では開けてみようか。爆発物が入っているわけでもなさそうだ」
「確かに、何の音もしないっすね」
 箱は不動である。硬い紙製の箱は、手に持つと何かが入っている重みを感じる。極端に重いわけでもなければ、極端に軽いわけでもない。
「振ってみる?」
「ゲイルにやらすな絶対にゲイルにやらすな」
「振らねーって! 普通に開けるから!」
 よく言えば怖いもの知らずで、悪く言えば後先考えない。それがゲイル・ウインドワードだ。彼が箱の封を解き、中のものを出していくのをおのおのが眺めていた。
 ――板。もっと正確に言うなら液晶の板。それと、何かを動かせそうなものがついた小さな……手のひらサイズの、赤と青の……これは何だろう? 誰も答えを出せるものはいなかった。
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