『負け犬はワルツを上手く踊れない』
2―2 「やっほう! 初めまして、蓮子ちゃーん!」 フェルナンドに連れられて謁見の間に入った途端、ちょう陽気な声に出迎えられて、多少なりとも緊張していたアタシは、ずっこけそうになった。 フォルティアの王様は、アタシを見るなり、満面の笑顔で玉座を降りて、駆け寄ってきたのだ。 しかも、服は襟元はだけて着崩して、マントも、フェルナンドみたいにピシっとまとわずに、中途半端に肩にかけて。 不良王様! そんな単語が脳裏を駆け巡る。 お、王様っていったら、もっとこう、威厳があって、格調高くて? とにかくもっとビシッと、偉そうに、玉座に鎮座ましましてるものだと思ったので、アタシの理想は、かなりいい勢いで打ち砕かれた。 そんなこちらの気持ち露知らず、王様は、がっちりとアタシの手を握ってくる。 「儂はフォルケンス・フォン・フォルティア。気軽にフォルちゃんと呼んでくれ」 「は、はい……」 歳のころは60代目前だろうが、フェルナンドやリーティアと同じ、青い髪に金色の目をしていて、オッサンのわりには整った顔。若い頃はさぞかしかっこよかったに違いない。 「私は王妃のフィーネよ。フィーちゃん、て呼んでね」 いつの間にか、王様の隣に来ていた王妃様が笑いかけた。 また、小さくって若々しくて、かわいらしい人だ。 フェルナンドは父親似、リーティアは母親似だろうことがうかがえる。 「本当は、もう一人、フォレストという息子がおるんだがな、これがまた放蕩息子でなぁ、各地をフラフラして、城に居着かないんだ!」 ああ、そういやフェルナンドは第2王子って言ってたから、お兄さんがいるのか。 ていうか、両親も兄貴もイニシャルFFFなワケか……。 「フェルナンド殿に貴女のお話を聞いて、会える日を楽しみにしてたのよ」 ん? 王妃様のセリフに何か違和感。 しかしそれを確かめる間も無く、フォル王様が、アタシの背をバシバシ叩いてくる。 「いきなり知らない世界に放り出されて、困ってる事も多いだろう。 しかーし! そんな時は、儂やフィーや子供達、城の連中に、遠慮無く言うが良い! 戦巫女に助力を惜しまない! これは、初代女王フェリシアから先祖代々伝わる、大事な家訓だからな!」 FFFの系譜も先祖代々ですか。 ゲホゲホせきこみながら、アタシは心の中で一人ツッこんだ。 |