「痛……ッ」
ハピ夫の鋭い爪が、アタシをかばったフェルナンドの肩を切り裂いたのだ。
「何をボーッとしている、この、レンコン女……ッ!」
フェルナンドはうずくまりながら、それでも叩く、憎まれ口。
傷をおさえた指の間から血がダラダラ流れまくって、あんたそれどころじゃないでしょう! と気が動転しかける。
だけど。
「ケケッ、運のいい奴め。しかし次で終わりだ、ケケーッ!」
そううそぶいたハピ夫が再び降下してきたのを見て、アタシは右手に意識を集中させる。
――出て来い!
光が集い、今度はきちんと形になった。
前回と同じ銀色の斧。
両手で握って、ブゥン、と振り回す。
しかしハピ夫はやはり紙一重で避ける。
「あ、危ない奴め! しかし、我ら魔族の主、デア・セドル様の障害になる者には全て消えてもらうぞ、ケーッ!」
デア・セドル?
そいつが、北の地で復活したっていう魔族の名前?
いや、今はそんな事を考えてる場合じゃない! 目の前のハピ夫を倒す事を考えなくちゃ!
斧じゃ効率が悪すぎるし……もっと、こう……そう、
鳥を正確に撃ち落とせるモノ!
そう願った途端、銀色の斧は光になり、再構築される。
アタシの手の中に現れたのは、長い筒状の武器。
銃だ。
それを敵に向けて構える。途端に、ハピ夫の顔がさーっと青くなった。
「え、ちょっとちょっと、それは卑怯なんじゃナイデスカーッ!?」
「フラフラ飛び回る、どっちが卑怯だ!」
怒鳴りながら銃口をハピ夫に向ける。
銃を持つなんて初めてだったけど、どう使えばいいか、どう照準を合わせればいいかは、戦巫女の能力だろう、感覚的にわかった。
キイキイ悲鳴をあげながら飛び去ろうとするハピ夫めがけて、引き金を引く。
ズゴォォン!!
銃というよりバズーカじゃこりゃ! という轟音と、ものすごい反動で、アタシは庭の端までゴロゴロ転がる。
そんな中でも視界の端に、ハピ夫が無数の黒い羽根になって消滅してゆくのを、しかと見届けていた。