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七月のなまけもの
七月のなまけもの

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#語彙トレ2026 前半まとめ②
『雪が解けて春になる』番外編登場人物

目次→714
本文→712

ゼファー 十八歳
 フィムブルヴェートを滅びの『霧』から守る竜族の竜兵《ドラグーン》。始祖種ダイナソアの血を引いており、性別が確定していない。(無性)
 様々な功績の結果、フィムブルヴェート同盟軍の盟主として、ひとと竜族をまとめる立場に就いた。

ヒオウ・ダガート・トス・ヴィフレスト 二十七歳
 ヴァーリの弟である、ヴィフレスト前王の第二王子。兄とは正反対の人格者。
 幼い頃に出会ったゼファーを女性と見て好意を寄せているが、当のゼファーは気づいていない。

ウィルソン・ガルフォード 二十五歳
 かつて『虹王国稀代の軍師』と呼ばれた名軍師。自分の策で妻を失い隠遁していたが、ゼファーに叱咤されて戦場に復帰し、同盟軍の筆頭軍師となる。

キルシス 十九歳
 竜兵の青年。ゼファーのすぐ上の兄。大柄で豪快、難しいことを考えるのが苦手だが、情には篤い。

マギー 十六歳
 本名マグノリア。ダイナソアの言葉を解読できるため、ヴィフレストに利用されていたが、今は同盟軍の一員となっている。キルシスとは顔を合わせれば憎まれ口のたたき合いをしながらも、憎からず思っているようだ。

アバロン 二十三歳
 竜兵の長兄。元々は有翼人・防人《さきもり》の孤児。魔法の力も、笑顔で放つ毒舌も強烈。

モリエール・ガルフォード 十九歳
 ウィルソンの義妹《いもうと》。自らも軍師の才を持つ。義兄《あに》に想いを寄せていることは、当人達を含めて周知の事実。

クリミア 二十歳
 竜兵の紅一点。気の強さと毒舌は長兄にも負けていないが、年頃の女性の側面も持ち合わせている。

クライブ・リューグ 二十六歳
 ヴィフレスト北部に生息する吸血鬼を屠る、吸血鬼狩り《ヴァンパイアハンター》一族の生き残り。

エリア・レラノイア 十九歳
 美貌を持つ先代防人盟主の娘。裏切り者の反乱により追われる身だったが、ゼファーの活躍により、新たな盟主となる。

メディリア 年齢不詳
 竜王《ドレイク》の女性。ヴィフレストを興した英雄リヴァティの双子の妹。

ヴァーリ・ヴァン・ウル・レクス・ヴィフレスト 二十九歳
 ヴィフレストの現国王。父親を殺して王位を簒奪し、大陸制覇を目論む。その戦闘力は人間離れしており、性格も残虐で、『鬼王《きおう》』の異名を持つ。

パイソン 二十二歳
 竜兵の次兄。長らく行方をくらませていた。卑屈で卑怯なところがあり、メディリアも動向を懸念している。畳む


#アルファズル戦記
#雪が解けて春になる
#語彙トレまとめ

創作,小説

#語彙トレ2026 前半まとめ①
『灰になるまで君を呼ぶ』登場人物

目次→714
本文→711

ディックス・フリーダン 二十歳
 アサル=アリム国の特殊部隊LINKS(帝国最終防衛機構)の一員で、隊長ギルガメッシュの養子。始祖種ヴァーンの血を引いており、銃火器の扱いと暗殺術に長ける。
 とある戦場でティナと再会し、子供返りしていたアグレイシア皇国の皇女レイティスを託されたことから、マルディアス三国の戦争に巻き込まれてゆく。

ティナ・シュミット 二十歳
 ディックスの幼馴染で、幼い頃からお互いに好意を抱いていたが、異能研究者の父によって、『凍結』の異能を開発する実験体として扱われていた。
 やがてギルガメッシュと袂を分かった父に連れられてアグレイシアに亡命するが、その先で、凍結能力で父を砕け散らせてしまい、さらには副作用で感情も痛覚も消えてゆくことで無感情になり、周囲から恐れられている。皇女レイティスと、その護衛騎士であるジークハルトだけは、恐れずに接してくれる。

ギルガメッシュ・レイウイング 四十三歳
 LINKSの現隊長。常にLINKS本拠のパーティションの裏におり、姿を見せることが無い。
 実際には、十数年前に致命傷を負って、身体をアンドロイドに換装しており、脳はLINKSが所有する『鋼鉄の鳥』エンリルを制御するために、機体に組み込まれている。

レイティス・ナディア・アグレイシア 二十一歳
 アグレイシア皇国の第一皇女。
 一触即発状態にあるマルディアス大陸の戦争を避けるため、特使としてアサル=アリムを訪れていたが、ブリーム宰相の陰謀により、アサル=アリム兵に殺されたと偽装される。
 その時のショックで子供返りしていたが、ディックスに救われ、本来の自分を取り戻して、終戦の演説を見事にやってのけた。

ジークハルト・リオ・クライスラー 二十六歳
 レイティスの護衛筆頭。ブリームの妨害で、レイティスのアサル=アリム訪問についてゆくことを許されず、アグレイシアに残されていた。
 だが、祖国でできる限りの行動を起こし、自我を取り戻したレイティスの演説を聞いて、ブリームを断罪した。

マオ 十三歳
 ディックスがジュメール国に向かう途中、暴走した『鋼鉄の獣』によって滅ぼされた村の生き残りの少年。
 子供である故に、何の力にもなれないことを口惜しく思っていたが、ディックスが倒れた際はティナと共に特効薬を求めて旅をし、終戦後はレイティスの側近となって、ジークハルトに対抗心を燃やしている。

ミランダ・フリーダン 二十五歳
 ディックスの実姉。幼い頃にジュメールの前議長によって、『終焉の獣』アヌナークの核として連れ去られる。

ヴォルフ・バルバロス
 アサル=アリム大統領。ディックスが『狸』と評する通り、狡猾な野心家。

エンリケ・フェーン
 ディックスの同僚。LINKS隊員でありながら、ヴォルフ大統領の養子として、彼の為に動く、自立心の無い青年。

ムハマンド・ブリーム
 アグレイシア宰相。現皇王を毒で病床に追いやり、他国に助けを求めようとするレイティスを暗殺することで、アグレイシアの権力を握ろうとした。

マルセナ・アンゼラ
 ジュメール国の議長。禁忌とされる『終焉の獣』アヌナークを起動させ、マルディアス大陸の覇権を狙う。畳む


#アルファズル戦記
#灰になるまで君を呼ぶ
#語彙トレまとめ

創作,小説

#語彙トレ2026 『この大地の上で』07/21~07/31分をまとめました。第一部完結です。

前→702
次→716

07/21-咆哮
 今は寒くない。崩壊した洞穴の近く、雨露をしのげる崖の下で、みんなで掛けものかぶって、寝ていた。
 明日になれば、ジャオウ目指して、進軍が始まる。それでも、お酒に寄ってるおかげか、みんな、すやすや眠ってる。掛けものをかぶり直した時。
 獣の咆哮が、聞こえて。
 時雨とエクセルが、真っ先に飛び起きた。
 ホクナの人たちが、驚いて見上げる上空を、破獣、飛んでる。
 また攻撃しにきたのかって、みんな緊張する。
 だけど、破獣は、二度、三度、上空を旋回して。
 北へ、ジャオウへ向けて飛び去った。
『挑発しおって! こんの下衆野郎が!』
 時雨がジャオウ語で叫んだ。

07/22-衰微
 がたがたと、道無き道を車輪が回って、非戦闘員を乗せた隊商の馬車が駆けてゆく。ホクナの小柄だが筋肉量が半端ない馬を駆った連中が並走する。馬の無い連中も、恐るべき脚力でついてくる。
『ラグナール軍が、ジャオウ首都近くに陣を展開している』
 その情報が、『黒面』という、ホクナの密偵からもたらされた。
 もう、一刻の猶予も無い。俺はアナベラに頭を下げ、ホクナの民に檄を飛ばした。

 道中のジャオウの村々は、ひどい有様だった。人も土地も、衰微しきっている。
 これが、『星の忍』だった頃には見えなかった光景か。恭司様には、見えていたのだろうか。だから、改革を?

07/23-墜落
「時雨様!」
 物見にやっていた劾が、馬にも乗らず、すごい脚力で戻ってきた。
「首都シラナミが、破獣の群れに襲われてまさ! その後からラグナール軍が!」
 ざっと血の気が引くのがわかった。間に合わなかったのか、俺達は。
「櫓の大弓隊が破獣を墜落させてるが、圧されてる。ありゃ時間の問題ですわ!」
 それを聞いて、俺は馬車の御者台にいるアナベラを呼ぶ。さすがに心配そうな彼女に言った。
「非戦闘員を連れて、シラナミからできるだけ離れてくれ」
「アタシはあんたらに賭けたんだよ!? 今更!」
「……頼む。あんたにしか頼めない」
 彼女が、痛恨で泣きそうな顔をした。

07/24-漂泊
 シラナミが、炎の赤と煙の灰に包まれているのが、丘の上から見えた。上空を、破獣が飛び交っている。
『元老院』の陰謀で、恭司様は死んだ。この国に守る価値はあるのかと、心が漂泊したこともあった。
 なのに、今、頭の中で、恭司様が笑うんだ。
『ええ国じゃろ、時雨』
 この丘で、子供の俺の頭をぐしゃぐしゃ撫でながら、あの方は笑ったんだ。
『おれはこの国の民を、もっと笑顔にしてえ。だから、一緒にジャオウを守ってくれ』
 そのジャオウが、恭司様が守ろうとした笑顔が、燃え落ちようとしている。
「おい、待て、時雨!」
 エクセルの制止も聞かず、『星辰』を手に、駆け出した。

07/25-神威
 シラナミは大混乱の中にあった。逃げ惑う人々に襲いかかる破獣。炎にまかれる人。それらを逃れても、ラグナール兵に斬り捨てられる人。数珠を鳴らして神威にすがっている僧侶がいる。
『あほか! 逃げろ!!』
 敵を叩き斬り、ジャオウ語で怒鳴る。相手は『星辰』を見て、俺が誰か悟ったようだ。
「ど、どうかジャオウを! 太守様を!」
 言いながら僧侶は小走りに去る。
 太守にお会いしたことはほとんど無い。恭司様が意図的に会わせなかったんだろう。父子仲はあまり良くないと小耳に挟んでいたから、俺を染めたくなかったんだろう。
 でも、今。
 太守を守らねば、ジャオウは終わる。

07/26-怨念
 まるで怨念がシラナミを覆っているかのようだ。破獣は絶え間なく飛び交い、ラグナール兵が逃げ遅れた民を刈る。
 助けても、助けても。命は失われ、怨念と化してゆく。
 ソフィア。ごめんな。
 あんたはこんな光景を見たくなくて、ラグナールを命懸けで飛び出したのに。俺はあんたの願いを守りきれなかった。
 何度も俺を癒してくれたのに。俺の心を支えてくれたのに。あんたの舞いは、綺麗だったのに。
 俺は、なにひとつ守れない。
「時雨様!」
 劾の声が耳を貫いて、はっと現実に戻る。
 その時には、破獣が迫っていて。
 劾が俺の前に飛び出し、鋭い爪が皮鎧を容易く砕いた。

07/27-破砕
「劾!」
『星辰』で破獣を叩き斬って、倒れ込んだ小柄な体を抱き起こす。
「へへ……、ヘマやっちまいましたわ」
 血を吐きながら劾は笑う。
「おらには構わねえで、天守へ。なあに、骨の一本二本折れても、心が折れねえのが、ホクナの民ですわ」
「劾の言うことを聞け」
 いつの間にか、傍らに来ていたエクセルが諭してくる。
「お前はジャオウとホクナの希望になるんだ。破獣が城を破砕する前に、太守を助けろ。俺も劾を誰かに任せてから、後を追う」
 そうだ。もう俺一人の命じゃあない。
「……死ぬな」
 ゆらりと立ち上がり、劾に言い置くと、燃え盛る道を再び走り出した。

07/28-晩夏
『どけ、邪魔や!』
 ジャオウ語で怒鳴り、『星辰』を振って、ラグナール兵を、破獣を屠りながら、天守を目指す。晩夏には精霊を送る祭で賑やかに盛り上がるシラナミが、見る影も無いほど破壊されていた。
 恭司様はたぶん、頑固に鎖国する父親を嫌っていただろう。それでも。太守様さえ生きていれば、ジャオウは生き返る、何度でも。
 俺は『星の忍』だ。ジャオウの為に生きなければならない。
 返り血なのか、自分の流した血なのかもわからないまま、『星辰』を振り回して駆ける。
 破獣をまた一体斬り倒した時、目の近くに血がついて顔をしかめた隙に、背中に灼熱の激痛が走った。

07/29-宿縁
 体から力が抜ける。熱を感じながら膝を折る。手放した『星辰』が、乾いた音を立てて地面に落ちる。
『時雨!』
 エクセルの声が遠く聞こえる。
 これが俺の終わりか? 『元老院』への復讐も果たせず、ホクナの民の期待にも応えられないで。恭司様も細の仇も討てないまま。まるで前世の宿縁から逃れられずに、決まっていたみたいじゃあないか。

 ソフィア。
 もうあんたの傍にいられない。あんたの舞いは綺麗なのに、もう、見られない。

「天守に火がついたぞ!」
 ホクナの戦士か、ジャオウの民か。誰かの絶望的な声が耳に届く。
 ああ。
 もう、終わらせてくれ。

07/30-断末魔
 シナラミ城にラグナール軍が押し寄せる中。

「ええい! 護衛は何をしておる!? 『元老院』は!?」
 粋な息子と似ても似つかぬ厳つい顔をした太守は、自分を守るべき者の不在に、焦り散らしていた。
 傍系から幼い者を養子に取って、自分達の傀儡にするからと、生意気な己が子を廃するのを認めたのだ。
 それなのに、城には衛兵がほとんどいない。その大半も、ラグナール兵の前に斬り捨てられている。
「あなたの味方はもういませんよ」
 目の前に現れたのは、ラグナール軍服を着ているが、草原諸国出身とわかる顔立ちの青年。
 彼が抜剣した直後、太守の断末魔が響き渡った。

07/31-双璧
 かつてジャオウ国とホクナ国は、東の大陸東部において、双璧をなす力を持っていた。
 だが、各国と友好を進めるホクナの発展を危ぶんだ、時のジャオウ太守は、辺境の小競り合いを理由にホクナに侵攻、滅亡に至らしめた。
 しかし、因果は巡るのだろうか。
 ホクナ併呑後に鎖国したジャオウの時勢を読む力は衰え、『元老院』の増長を招き、国を守る筆頭『星の忍』も失って、とうとうラグナール軍に攻め滅ぼされた。
 燃え落ちる首都シラナミから、都市連合の隊商の馬車が沢山、北へ向かったというが、本当の行き先を人々が知るのは、しばらく後になる。

(『この大地の上で』第一部 完)畳む


#アルファズル戦記
#この大地の上で

創作,小説

たいへん! 気づいたら7月が終わってたわよ!
日記も約一週間空けてしまった……。
疎外感孤独感に加えて、創作意欲がしばらく渇れてしまったのて、マジでヤバかったです。

今は習作でヒオゼファの短編をちまちま書いています。29歳のヴァーリと27歳のヒオウに妃がいないのおかしいよなって、ヒストリカルざまぁを読んでいて思ったので、後付けでも理由をつけようと。
でも、ゼファーもヒオウも、メンタルが強すぎて、いやがらせとかいじめに屈しないで、むしろやり返すくらいの気概があるんですよね。たつみ村に住むとこうなる……。(両手で顔を覆う珍獣)

#アルファズル戦記
#雪が解けて春になる

日記,ひとりごと2026年,創作

2026年7月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

#雪が解けて春になる の載せ忘れていた漫画3本目です。

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ヒオウは怒ると静かに圧をかけるタイプなのは、以前にも描きましたね。
ゼファーには距離を置いてほしくない、イスミ・コウです。畳む


#アルファズル戦記

ひとりごと2026年,創作,マンガ

#語彙トレ2026 『この大地の上で』07/11~07/20分をまとめました。
この進度で12/31に終わるのか!? 私もわかりません!!

前→693
次→707

07/11-百雷
 恐らく、劾は主君からこれを託されただけで、中を読んでいなかったんだろう。この経緯を知っていたら、恭司様を恨んだりしていない。エクセルは……わかんねえな。実の兄だってのに、お互いを知らない期間が長すぎたせいで、あいつの頭の中がわからん。
『男女が二人いたら、何でも惚れた腫れたになると思うなよ』
 サーリアでそう耳打ちされたから、本当にソフィアのことは何とも思ってないんだろうが。
「時雨!」
 耳に慣れた声が、俺を現実に引き戻す。
 女衆や護衛に付き添われたソフィアが、目に涙をためて駆けてきたかと思うと、思い切り飛びつかれる。百雷みたいな喝采が起きた。

07/12-昏睡
 やばい。照れている場合じゃない。
「被害は?」
 先頭に立つ劾に問いかけると、ソフィアが不服そうに頬を膨らませたが、今は勘弁してくれ。ホクナの上に立つ人間としてやることがある。
「破獣にやられたのが二名、重傷が五名ほど、昏睡が一人。崩落で、洞穴に残ってた戦闘員は、皆逝っちまいましたわ」
 俺に託した、槍術士の顔が忘れられない。あの男は、俺を主君とあおいで、ホクナの未来を心から望んだんだ。
「彼らを弔おう。俺はホクナ式を知らないから、あんたらのやり方を教えてくれ」
「合点でさ!」
 劾が得意気に拳で胸を叩く。
「それが終わったら、次は、ジャオウだ」

07/13-夜色
「ホクナの夜色は、それはそれは綺麗でしたわあ」
 夜を迎えた空の下、破獣にやられたひと、瓦礫の下から何とか引き出せたひとを、火にくべた。立ち上る煙を見上げながら、劾さんが、ぽつり、呟く。
「わたしも、見たかった、な。時雨の故郷」
「姫さんにも見て欲しかったですわあ。ジャオウの都にも負けん、豪華絢爛な夜でな」
 時雨の隣で、膝を抱えると、劾さんが髭面を、くしゃくしゃにして、笑った。
 救えなかった。癒しの力、持ってるのに。この炎に消えたひと、沢山、いる。わたしを守ってくれた、槍術士さんは、見つからなかった、って。
 悔しい、すごく、悔しいよ。顔を伏せた。

07/14-帰還
「お姫さん、そんなに落ち込むんじゃあないよ」
 いつの間にか、隣にいた、アナベラさんが、ぽんぽんと、わたしの背中を叩く。
「あんたとアタシ達のおかげで、ホクナの希望が帰還したんだと思いな。どうやら連中、湿っぽいのは嫌いらしいよ」
 言われて、アナベラさんの視線を、追う。時雨とエクセルが、ホクナの人達に囲まれて、お酒、飲まされてる。
 あの。だいじょぶ、かな。
 エクセルって、
『飲み過ぎると翌朝五分くらい記憶が飛んで、自我を戻すのに手間なんだよな』
 って、ぼやいてたこと、ある。
 弟だから、時雨も、そんなこと、あるのかな?
 考えたら、なんか笑えてきた。

07/15-追放
「そういえば」
 にこにこ、時雨たちを見守っていたら、アナベラさんが、急に声を低めて、囁いてきた。
「ホクナを追放されて、ゼノスのもとに逃げ込んだ奴がいるって、劾から聞いたんだよ」
 どきり、と。心臓が脈打つ。
 そういえば、ラグナールにいた頃。あのひとの怖さを、見抜いて、早々に降ったひとたち、けっこう、いた。ラグナール人じゃないひとも、いた。
 あのひとたちは、ラグナールにつけば、自分の野望、叶うって、勘違いしてた。
 あのひとは、普通じゃなくなってた、けど、コウモリを許すほど、狂ってはいなかった。
 裏切り者は、みんな、みんな。破獣になったんだ。

07/16-亡霊
『ラグナール王城には巨人の亡霊が出る』
 まことしやかに、飛び交った、噂。
 噂、なんかじゃ、ない。
 破獣にされたひとたちが、城から飛び立つのを、夜に見た誰かの、言葉。
 わたしは、なにも、できなかった。
『ティアナ。もうすぐノルンは、いや、アルファズルは、私たち二人のものになるよ』
 両手を広げて、空をあおいで、恍惚とした表情で、あのひとは、語ってた。
 わたしに、じゃない。
 いつまでも、そのうつろな瞳の先にいる、ティアナの亡霊に、向けて。
 知ってる、よ。
 ティアナが、悲しそうな顔、してたの。
 あれは、本物の、ティアナの亡霊なんだ。

07/17-供養
 気づいた時には、見えてた。あのひとを哀しげに見つめる、わたしにそっくりな、わたしと色の違う、あの子。ティアナ。
 始祖種エリオンなのに、わたしは、亡霊と話せない。あの子の本音、知ることができない。
 でも、その顔が、語ってた。
 自分のせいで、おかしくなっちゃった、大好きなお兄さんを、止めて欲しいんだ、って。
 だからわたしは、ラグナールから、あのひとから、逃げ出した。あのひとを、止めるために。
 もう、言葉を尽くしても、あのひとは、止まらない。なら、言葉の代わりに、刃を振り下ろすしか、ない。
 それが、唯一、ティアナを供養する方法、なんだって。

07/18-結界
「姫さん、そんなん暗い顔ぉしとると、死んだ奴らが安心して極楽に行けねえわ」
 劾さんが、ぽつりと喋り出す。
「結界、言うてな。ホクナではあの世とこの世を分ける境目があるんやわ」
 ホクナの死生観は、ラグナールとは、かなり違う。それは、ジャオウで育った、時雨を見てても、わかる。この辺り、文化が、ノルンでも、かなり独特。
「明るく送ることでな、連中も安心して結界を越えていけるんやわ」
 言われて、ふわふわ、胸に浮かんでくる気持ちが、ある。
「じゃあ」
 久しぶりに、舞の布を翻して、立ち上がる。
「舞姫が、送りますか」
 にっこり笑うと、みんな、拍手してくれた。

07/19-叛逆
 ホクナの人たちの前に、しずしずと、踏み出して。
 ひらり、はらり。ばさり。
 弔いの炎に負けない勢いで、布を翻し、わたしは、踊る。
 ジャオウに叛逆して負けた人たちも。ラグナールに叛逆を望んで逝った人たちも。
 どんな人たちも、ホクナの未来を、夢見ていた。
 だから、願うよ。
 あなたたちの魂が、迷わず天上に……ホクナの死生観では、極楽、かな。そこに、たどり着けるように。
 ゆらり、ざばり。
 緩急をつけて、踊る、踊る。
 さっきまで、お酒を飲んで盛り上がってた人たちも。すっかり静まり返ってる。
 視線の端で、時雨が微笑んで見てくれているのを、みとめた。

07/20-虚像
 舞い終わって。拍手喝采が、わたしに向けられる。
 国と国の関係を思えば、刃、向けられても、おかしくないのに。ホクナの人たちは、残酷なほどに、優しい。誰に、剣を突きつけるか、わかってる。
 戦に関係ある、実像と虚像、区別、ついてる。
「……ありがとうな」
 息を整えてると、背後から、時雨に声、かけられた。
「あんたのおかげで、胆が据わったよ」
「わたし、そんなに、役立った?」
「大いに」
 歯を見せて笑う、その姿に、心臓、どきどき言う。止まれ。違った、静まれ!
「おれはホクナの先頭に立って、ジャオウも守る。虚像の英雄にはならない」
 真顔で、時雨は言った。畳む


#アルファズル戦記
#この大地の上で

ひとりごと2026年,創作,小説

#雪が解けて春になる の載せ忘れていた漫画2本目です。

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ヒオウがナチュラルイケメンムーブをするのは、本編で出てきた時からそうですが、ニーザがとことんツッコミ役になるのは、漫画版だけの役割ですね。
白ツヤをニーザの髪に入れようとして、失敗した跡があります。
ツヤベタペン素材もダウンロードしたのですが、なかなか上手く行かないですな~!畳む


#アルファズル戦記

ひとりごと2026年,創作,マンガ

目の描き方は、最近頭を抱える事項ですね。
#雪が解けて春になる のヒオウを美形に描きたいんだけど、彼の目には「上がつり気味で下がたれ気味」という設定があり、描き重ねるほどにそれがどんどんできなくなって、美形も崩れてるんですよね。

ゼファーは「ガン○ム種のカ○リ」という手本がいるので、描きやすいんだけど……。
最近、目の上の線を平井さんの真似してるんですが、これが上手くはまる時とはまらない時の差が激しくて、あたま抱えてます。

日記,ひとりごと2026年,創作

#語彙トレ2026 『この大地の上で』07/01~07/10分をまとめました。

前→689
次→702

07/01-崩落
「ありがとな……お姫さん」
 まだ、血は拭き取れてないけど、死にかけだったひとが、笑いかけてくれる。
「あんたは、時雨様と一緒に来てくれた、救い主だあよ」
 周りの空気、和らぐのが、わかる。
「……そうや。国なんか関係ねえ」
「疑って悪かった」
 少しずつ、ひとが集まって。決まり悪そうに、微笑む。
 うん、そうだよね。話せばわかり合えるよね。壊れてしまったあのひとを、止める方法、あるよね。
「ありがとう」
 笑い返した、その時。
 微震がして、皆が、きょろきょろする。震動、大きくなる。
「崩落や!!」
 誰かが叫ぶと同時、洞穴の天井が、崩れた。

07/02-渇水
 洞穴の外には、渇水によって干上がった窪地があった。そこに破獣を誘き寄せる。
「時雨様ぁ!」
 劾が銅鑼声をあげた。
「破獣は首落とすのが一番確実ですわ!」
 そうして手で首をかき斬る仕草をしてみせる。
「わかった」
 青竜刀『星辰』を手にし、舞い降りてくる褐色の異形に向かい合う。
 振り下ろされた鋭い爪持つ腕を、地面を蹴ってかわし、ばねのように跳ねて飛び込む。『星辰』を振り抜けば、鬼のような首が飛んで、蒸気を吹き上げながら消滅してゆく。
「おああ!」
 誰かの悲鳴が聞こえる。
「怪我した奴は下がれ! 誰も死ぬな!」
 檄を飛ばせば、応、と返ってきた。

07/03-真紅
 真紅の血が舞う。
 破獣に翻弄されて、爪と牙の前に、倒れてゆく奴がいる。
「あまり周りに気を取られるなよ!」
 背後から毒針を投げて援護してくれるエクセルが、注意を飛ばしてきた。
「連中は、お前の為に命を張ってるんだ。そこにかかずらってお前が倒れたら、ホクナの生命線まで切れるからな!」
 奴の言う事は正しい。もう、俺一人の命じゃあなくなった。ジャオウとホクナ、両方の命運がかかってる。『星辰』を握り直した時。
 窪地の一部が、破獣の重みに耐えきれなかった。ホクナの戦士を何人か巻き込んで、崩落する。
 あの下にいる、碧い瞳を思って、腹の底が冷えた。

07/04-破滅
 頭から血の気が引くのがわかる。誰も死ぬなと檄を飛ばしたのに、戦わない奴から破滅してゆくなんて、そんなのありか!?
「おい、待て!」
 俺が何をするかわかったんだろう。エクセルの焦った声が背中にぶつかる。
『指揮はおめえでもできるじゃろ!』
 思わずジャオウ語を飛ばして、陥没した穴へ飛び込む。
 瓦礫に足を挟まれて動けなくなっていた女に、破獣がゆうらりと近づいてゆくのが、視界に入る。
『星辰』を構えて距離を詰め、一瞬で振り抜く。首を飛ばされた破獣が消える。
「あ、ありがとござんす、時雨様……!」
 女が礼を言い、男達が瓦礫に取りつく中、目的の姿を探した。

07/05-残火
「ソフィア!」
 彼女の名前を叫ぶ。頼む。返事をしてくれ。どこかで上手く瓦礫を避けていてくれ。
 洞穴の中で焚いていた火が潰されて、残火の煙をあげている。破獣の蒸気と触れ合ったら、また燃え上がるかもしれない。背筋が冷えた時。
「時雨……様!」
 苦しげな男声が耳に滑り込んだので、振り向く。
 非戦闘員の護衛に残した槍術士が、槍と己の腕で重たげな瓦礫を支えながら、視線を足元に向けている。それにつられて見下ろし、心臓が跳ねた。
「ソフィア!」
 頭を打ったのか、額から血を流しながら、ソフィアが倒れている。
「早う、姫さんを助けてやってくだせえ!」

07/06-絶望
 抱き込むようにソフィアの身体を抱えて、瓦礫の下から引きずり出す。足くらい折れてるんじゃあないかって危惧したが、額の血以外は目立った外傷は無い。最悪の絶望からは逃れられた。
「あんたも。早く出てこい」
 ずっと支えていてくれた男に声をかける。だが、彼は首を横に振った。
「時雨様。わいがここで手を離したら、時雨様たちごと巻き込んで、この辺全部潰れますわ。だから」
 黒い瞳が、切望を込めて俺を見る。
「わいが支えられているうちに、生きてる連中連れて、逃げてくださいや」
「そんな、馬鹿なことを!」
 声を荒げても、相手の意志は変わらないようだった。

07/07-蝉時雨
『ざけんな! 誰も死ぬな言うたんだ! おめえも死なせるか!』
 もうどうしようもないことは、頭のどこかで理解しているのに、ジャオウ語でわめいてしまう。
『時雨は、気に食わんことがあるとシャーシャー蝉みたいにわめきたててなあ。蝉時雨じゃぞ』
 子どもの頃、俺が聞き分けないと、恭司様が困った顔をして頭を撫でてくれたのを、今更思い出す。
「時雨様」男が笑う。「絶対、ホクナを再興してくださいや」
 ぐっと拳を握り締めてうつむき。顔を上げて。
「あんたの忠義を、無駄にはしない。ホクナは生き返る」
 満足そうに目を細める相手から視線をはがし、ソフィアを抱えて離れた。

07/08-秘帖
 外に飛び出した瞬間、洞穴は轟音を立てて崩れきった。護衛に残した連中が命を張ってくれたおかげで、殆どの者が生き残った。
 だが、『殆ど』だ。『全員』じゃあない。外で戦っていた中にも、傷を負った奴がいる。
 ソフィアを女衆に託して、独り、近くの岩場で座り込み、頭を抱える。
 俺が、犠牲にしたんだ。ホクナの民に希望をちらつかせて、死地へ追いやったんだ。
「時雨様」
 劾の声が背中に投げ掛けられる。エクセルがいる気配もする。
「こんなんあるだろと、おとん様が秘帖を残してくださってますわ」
 のろのろ振り向けば、劾がぼろぼろの表紙の帳面を、手渡してきた。

07/09-怨嗟
 一人きりで、帳面をめくる。
 ホクナ国主、つまり実の父親の、個人的な記録。ほとんど日記のようなものだった。
 もっとこう、民を治める苦しさとか、ジャオウとの軋轢とか、愚痴や怨嗟に満ちているのかと思ったら、全然そんなことは無い。
 視察に降りて田植えを手伝ったら、ぎっくり腰になったとか。祭に交じって水を浴び笑った話とか。自分には勿体無いくらいいい嫁をもらったとか。
 そんな他愛の無い話が、躍るような筆致で綴られている。
 ある箇所で、手が止まる。
 正室が男子を産んだ、と。
『嫡男とかしがらみにとらわれんで、思うがままに、愛される国主になって欲しいのお』

07/10-鎮魂
 記録は続く。
 俺や他の子供達の成長。毎年夏に、鎮魂の灯籠を川に流す儀式。その最後のページに、酷く乱れた字で、書き記されてあった。
『過激派を抑えられんかった。ホクナは滅亡する』
 ホクナの反乱は父親の暴走ではなかったのだと、心のどこかで安心する。だが、その続きに目を奪われた。

『ジャオウの跡継ぎが、密かに来た。時雨の命を助けて欲しいと願うと、「んなら、俺の子として育てるさ。強く正しい男にする」と快諾してくれた』

 頭を殴られた気分だった。
 実父も、恭司様も、俺を息子として誠実に見ていてくれたんだ。
『……親父』
 思わず背中を丸めた。畳む


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