プロローグ:神代の誓い


 さながら地獄絵図だった。
 人も獣も植物も、あらゆる命が炎のもとに死に絶え、息をしているものもほとんど無くなった大地の上に、投げ出されたように横たわっている巨体がある。
 その色は、全身黒。広がった六対の翼は、煙立ち上る二つの山と干上がった一つの湖を覆っている。瞳の無い翠の眼球から光は失われ、一つ一つが剣呑な刃のような牙がぞろりと生えた口からは赤黒い血を垂れ流していた。
 夜明けを迎えようと白んでくる空に、銀の翼が翻る。地上に倒れ伏す黒の巨体とよく似た姿をしたそれは、空中で一声いなないて旋回する。そして悠然と翼をはためかせ、黒の巨体の傍らへと静かに降り立った。
 一対の赤い目が、黒い遺骸をじっと見つめる。
『私は、再生させる。この世界を』
 どこから声を発しているのか、口を動かす事無く、人の言葉でそれは語る。
『いつか必ず、再び生命がこの地に息づくように』
 直後、虹色の光が銀の巨体から放たれた。その光に触れた箇所から、黒の怪物が粒子と化して、空に還ってゆく。同時に、銀の翼を持つ獣の姿も薄らいでゆく。
 そして、それは幾つかの光球となって、遙か彼方へと飛び去った。

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