年上の彼


中学一年の時に出会って、好きになった彼は、ふたつ年上。
同じ通学路を通って登下校したのは一年足らずで、彼はすぐに高校へ行ってしまった。
一生懸命勉強して、同じ高校へ追いかけて行ったけど。
やっぱり、一緒にいられる時間は一年しか無かった。
「謙ちゃんはどんどんわたしの先に行っちゃって、寂しいよ」
高校三年のある時、そう洩らしたら、大学二年の彼はやわらかく微笑った。
「でも、今年梨恵が頑張れば、今度は同じ大学で二年間一緒にいられる」
そう言って、赤本でわたしの頭をぽんぽん叩く。
「一年伸びただけじゃん」
ムスっとふてくされてみせると。
「それで僕らの仲が終わっちゃう訳じゃないだろ?」
わたしを映す眼鏡の奥の目が、優しく細められる。
「僕は、梨恵が追いつくのをずっと待ってるから。だから、頑張れ」
ああ、彼のこんなところを。
十三歳のあの夏の日から、わたしはずっと、好きなんだ。

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