『にわか雨と青い傘』

 今日の天気予報は、晴れ。降水確率0%って、言ってたのに。
 校舎を出ようとした途端、アタシの眼前に広がった光景は、どしゃ降りの、雨、雨、雨。
 呆然としていたら。
「何こんな所でぼーっと突っ立ってるの。邪魔なんだけど」
 いつもの意地悪声。いつの間にか、奴が背後に立っていた。
「邪魔で悪かったわね」
「で、何してんの」
「見りゃわかるでしょ。傘が無くて困ってるんでしょうが」
「君さ、折り畳み傘を常備しようとかいう考えは無い訳?」
「無い」
 アタシの即答に、奴はしばらく眉間にしわ寄せて、額に手をやっていたけれど、やがてその手を脇に抱えた青い鞄にツッ込み、ごそごそと探って。
「はい」
 差し出されたのは、青いシンプルな折り畳み傘。
 その鞄といい、最初のルーズリーフといい、ケータイといい、本当に青が好きな奴だ。
 ……じゃなくて!
「はい、って」
 アタシは思わず奴の顔を見上げる。
「これアタシに貸したら、あんたどうするのよ?」
「駅までくらい、走って帰る」
「無理しないでよ。結構距離あるよ。風邪ひくわよ」
 ガリ勉でヒョロヒョロなんだから、そんな体育会系男子のような真似ができるものか。確実に明日休みだ。
 そしたら、奴はにっと八重歯を見せて。
「じゃあ、相合傘して帰る?」
 アタシは、結構長い間言葉を失って立ち尽くした後。
「……いいよ」
 小さな声で返す。奴は、さらに子供みたく嬉しそうに笑った後、青い折り畳み傘をばさりと広げる。
 二人が入るには少々小さすぎる傘に、肩を寄せ合って、雨の中へ踏み出した。
 隣に並ぶ奴は、日頃感じていたより背が高くて。でも、やや小柄なアタシの身長に合わせて、低めに傘を持ってくれている。
 そんな気は回らない奴だろうと信じきっていたのに、意外な一面を発見したと思った。
 奴と出会って二年目の夏の、にわか雨。