『町角コーヒーショップ』

貴方が住んでいるような、ただ普通の町に在る、何の変哲も無いコーヒーショップ。
見つける人だけが見つける、町角の小さなコーヒーショップ。
うちは、そんなお店です。

店番は、私一人。
店員も、私一人。
一人で切り盛りできちゃう、そんな小さなコーヒーショップ。

うちにメニューはありません。
どんな人に、何を出せば良いか。
私が、お客様にピッタリの珈琲を見抜き、ご提供します。

知る人だけが知る、来る人だけが来る。
そんなお店だから、お客様はほとんどが常連さん。

そう、常連さんたちに出す珈琲も、勿論決まっているんです。

例えば…。

毎日朝一番、開店前からお店の前で待ってるお客さん。
寒い日でも欠かさず来てくれるその人には、熱〜いモーニングブレンド。
心も身体もポカポカにして、一日を始めていただきましょう。

いつも仏頂面のお父さんは、酸味甘味苦味のバランスが取れた、ブラジル。
クセの少ないストレート豆で、ナナメのご機嫌も真っすぐに…なるかな?

朝のランニング後のスポーツマン。
日焼けしたそのお顔には、同じく太陽の恵みをたっぷり受けた、ハワイ・コナが似合います。

眠そうに欠伸して来る、フレックス出勤の会社員さんには、目覚ましエスプレッソ。
エスプレッソは深煎りだから、カフェインが少ないはずだろうって?
ええ、本当はそうなんですけどね。
苦さで寝覚め一発!…って、おまじない気分です。
実際彼には、効いてるみたいですし。

午前のお散歩ついでに、必ず立ち寄ってくれるおばあちゃん。
オリジナルのマイルドブレンドで、のんびりゆっくりしていただきます。

ちょっと珈琲が苦手だって仰ってた、その娘さん。
ミルクたっぷりのカフェ・ラテをお出ししたら、とても気に入ってくれたみたい。
今じゃ、本格的にサイフォンまで買われて、すっかり珈琲のとりこだとか。

昼休み、食後の一杯を求める、こだわり派のおじさま達には、本格派深煎り炭焼珈琲。

向かいのビルから来られる社長さんは、一段階リッチに、ブルーマウンテン。

フルーツ好きだと言うお姉さん。
ジュースもキャンディも歯磨き粉も(!)、フルーツ味じゃないと気が済まないんですって。
やっぱり彼女は、フルーティな香り満点のモカが、大のお気に入り。

甘いもの大好き、とても暑がりな、少〜し太めのお兄さん。
低脂肪ミルクに、ひんやり氷珈琲を解かして召し上がれ。
ガムシロップ無しでも、ミルクの甘味で十分おいしくいただけます。

保育園のお迎え前に、お茶とお喋りをひとつ、のお母さんたち。
ふんわりミルクのカプチーノと、クリームたっぷりコーヒーゼリーをお出しします。
え? カフェ・ラテとカプチーノの違いがわからない?
う〜ん、ミルクの差だったかな?
……エヘ、忘れました。

変わり種に目が無い、近所の学生くん。
カフェ・ナポリターノを出したら、
「珈琲に檸檬入れるんですか!」
目を真ん丸くして吃驚。
「むか〜し、アメリカで『夜明けのコーヒー』として流行してた」
って裏話をしたら、大ウケでした。

そうそう、いつも閉店前、最後に来るお客さんがいるんです。
居酒屋で一杯ひっかけた後の、「向かい酒だ〜!」ってね。
だからお出しします、向かい酒。
リキュール入り珈琲です。
実はお酒も、ちょっとだけ置いてるんですよ。
ラム、カルーア、アマレット…その日の気分でどうぞ。

そして、私の特別。
毎週決まった曜日、決まった時間に来るあの人に、スペシャル・ブレンド。
あの人にだけの、私からの特別。
秘伝のブレンド率で掛け合わせた珈琲に、隠し味を、ひとつ。

隠し味って何だって?
ふふっ、それはですね……、

Love

です。

貴方の住む町角にも、在るかもしれない、小さな小さなコーヒーショップ。
見つけたら、どうぞいらしてくださいね。

貴方にピッタリの一品を、ご提供いたします。