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七月のなまけもの
七月のなまけもの

No.716

#語彙トレ2026 『この大地の上で』08/01~08/10をまとめました。
第二部開始です。

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08/01-変容
 ジャオウ陥落から、半月が過ぎた。
 その、たった半月の間に、東の大陸は、大きな変容を、見せた。
 鎖国とはいえ、壁になっていたジャオウを失って、都市同盟にも、ラグナール軍が攻め込んだ。
 どこまで侵略されたか。今のわたしたちには、わからない。

 ここは、草原諸国南果ての砦、ルーマン。
 ラグナール軍に、最初に侵略された、草原諸国のひとびとが、反撃の機会をうかがって、生き残りを、集めてる。
 そこに、ジャオウとホクナの生き残りを連れた、アナベラさんの隊商、つまり、わたしたちが、なだれこんだ。
 砦は混乱してるけど。
 草原を渡る風は、他人事の、ようで。

08/02-予言
「事後予言の成就ではないか!」
 砦の廊下を、通った時に、いきりたった老人の怒鳴り声、聞こえた。
「我らが草原の民の予言士は、ジャオウの崩壊を見通していた。差し伸べようとした手を取らなかったのは、そちらの落ち度では?」
 少し、部屋の中が、見える。わたしとそう歳が変わらなそうな、茶髪の女の子。彼女が、草原諸国の盟主、ヴァイシャ・フェルガナ。
 そして、彼女に食いついてるのは、ジャオウの『元老院』の生き残り。
 時雨の、仇たちが、のうのうと、生きている。
 運び込まれた、瀕死の時雨を見るなり、
『厄介者が生きていたのか』
 って、舌打ち、した。

08/03-隠遁
 ジャオウの『元老院』は、隠遁しなかった元忍で、構成されているらしい。勿論、『星の忍』も何人か、入ってる。何人か、なのは、『星の忍』の死亡率が、かなり、高いから。
 細さんが言ってた、『元老院』でも、偉いひと、水原長音、いるか、訊いてみたら。みんな、苦いもの飲んだような顔して、黙り込んだ。
 あ、死んだな。暗殺。わたしにも、わかった。
 というか、シラナミの民も、辺境のひとたちも、たくさんたくさん、犠牲になったのに。なんで、『元老院』は、こんなに生きてるんだろう。
 時雨が知ったら、めちゃくちゃ、怒るだろうな。
 考えながら、砦の一室に、入った。

08/04-掠れる
「……よ」
 エクセルが、普段の飄々さが嘘みたいな、暗い顔して、こっち向いて、手を挙げる。視線を戻す先には、彼の、たったひとりの、弟。
 時雨が、寝台の上で、眠ってる。
 ジャオウが陥ちた、あの日。アナベラさんに、食いついて、シラナミに戻ってもらった。
 城への道の真ん中で、ひどい傷と火傷で、動かなくなってる時雨を見つけた時は、心臓、止まるかと思った。
 その場で応急に、エリオンの力、使って。その後も、何度も、癒しの力、使った。
 おかげで傷は癒えたけど、時雨は、目を覚まさないまま。
「時雨」
 掠れる声で、寝台に取りすがる。
「お寝坊さん。起きてよ」

08/05-白日
「まあ、こいつが目を覚ますまで、俺達は大人しくするしかねえ」
 時雨にすがりつくわたしに、エクセルが、声、かけてくる。
「ジャオウの『元老院』のやらかしを、白日の下に晒すには、こいつの口から全部言わせないと、駄目だ」
 ジャオウ太守跡継ぎの養子で、ホクナの嫡男。たしかに、その立場は、ひとを、動かす。

「そんな呑気なこと言って、その人が起きるのを待つの? その間に『元老院』は、自分たちの失態を消すために先手を打つわよ」

 突然聞こえてきた、女性の声に、わたしと、エクセルは、驚いて振り向く。
「実際、私が舞岡細の『流星』を受け継がされたわ」

08/06-糠雨
 東方には、珍しい。赤みがかった黒髪を、ふたつに結わいてる、女の子。ジャオウ式の服、着てるから、ジャオウ人、なんだろう。
「あたしは嵯峨光(さが ひかる)。父親が『星の忍』だったから、因縁を継がされた形ね」
「『星の忍』は公式処刑かなんかか?」
 エクセルが、ちょっと、皮肉っぽく言う。途端に光さんが、むっとした顔、した。
「ホクナの側室の子は、お口がよろしくないようで」
 あ、これ。似た者同士の同族嫌悪、起きるやつだ。
 窓の外では糠雨がしとしと降ってる。エクセルと光さんは、お互い、睨み合ってる。
「……どういう状況だよ、これ」
 その時、時雨の、声が。

08/07-輪廻
 時雨が。うっすらと。目、開けてる。
 わたしの力を使って、傷が癒えても、『目覚めるかどうか』って、医者も匙投げた、時雨が、起きた。
 思わず、わっ、て泣き出して。時雨に、すがりついた。
 輪廻って、いうんだっけ。天上から地獄まで彷徨うの。ずっと、地獄でもいい。時雨が生きていてくれるなら、わたしは、エリオンの力、時雨のためだけに、使ってもいい。
「……とりあえずさ」
 時雨の手が、ぽんぽんと、わたしの背中を叩く。
「現状を説明してもらっていいか? なんで嵯峨良人(りょうじん)とこの跳ねっ返りまでいるんだよ」
「あんた、恭司様がいないと相変わらずの言い方!」

08/08-浅見
 頬を膨らせる、光さんをよそに、エクセルが、時雨に説明した。
 シラナミは陥ちたこと。アナベラさんの機転で、生き残りは、草原諸国へ、逃げてきたこと。
「劾も無事だ。ソフィアの力と、あいつ自身の異様なしぶとさで、もう戦える」
 それを聞いた時雨は、「そうか、良かった」って薄く笑った。
「良くない」
 光さんが、怒った様子で、拳、握り締める。
「『元老院』はほとんど生きてんのよ。あいつらの浅見で、皇本家の傍流が、『宿星』の『星の忍』になって、お飾りの太守候補にされてる」
 時雨が、表情、険しくして、飛び起きようとして、失敗する。
「皇野高砂……か!?」

08/09-誘惑
「高砂(たかさご)はまだ十二とかだろう」
「おおかた、『元老院』が、『お母様に会えますよ』とか誘惑したんでしょ」
 時雨と光さんの話に、わたしと、エクセルは、顔、見合わせる。
 あ、大体読めた。
 傍流が、本家に反逆しないよう、高砂って子のお母さん、人質に取ってた。それを盾にして、彼? 彼女? どっちかわからないけど、高砂を誘導した。
「で」
 エクセルが、眉間に皺、寄せる。
「こっち側に引き込めそうなのか?」
「父さんが生きてたら、『元老院』を出し抜けたんたけどねえ」
「俺も高砂にはほとんど会ったことが無い」
 光さんと時雨が、同時にため息、ついた。

08/10-均衡
「とにかく、『元老院』に高砂を握らせとくのはまずい。草原諸国との協力の均衡すら壊す」
 時雨が、険しい顔して、唸るように洩らす。
「草原諸国には、ジャオウ・ホクナ連合と対等で接しないとやばい。奴らは氏族の繋がりを重んじる、絆の民だからな。反撃されたらひとたまりもねえぞ」
 エクセルが、腕組みして、目を閉じるけど。
「それが、草原諸国も揺れてるっぽいんだよねえ」
 新たに場に現れたのは、アナベラさんだ。
「どうも、盟主のフェルガナ族の嫡子ヴァイシャの許婚が、草原諸国をラグナールに売ったらしい。それで両氏族の長が死んで、ヴァイシャが今、長に立ってるんだって」畳む


#アルファズル戦記
#この大地の上で

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