#語彙トレ2026 『この大地の上で』07/11~07/20分をまとめました。 この進度で12/31に終わるのか!? 私もわかりません!! 前→693 次→707 続きを読む07/11-百雷 恐らく、劾は主君からこれを託されただけで、中を読んでいなかったんだろう。この経緯を知っていたら、恭司様を恨んだりしていない。エクセルは……わかんねえな。実の兄だってのに、お互いを知らない期間が長すぎたせいで、あいつの頭の中がわからん。 『男女が二人いたら、何でも惚れた腫れたになると思うなよ』 サーリアでそう耳打ちされたから、本当にソフィアのことは何とも思ってないんだろうが。 「時雨!」 耳に慣れた声が、俺を現実に引き戻す。 女衆や護衛に付き添われたソフィアが、目に涙をためて駆けてきたかと思うと、思い切り飛びつかれる。百雷みたいな喝采が起きた。 07/12-昏睡 やばい。照れている場合じゃない。 「被害は?」 先頭に立つ劾に問いかけると、ソフィアが不服そうに頬を膨らませたが、今は勘弁してくれ。ホクナの上に立つ人間としてやることがある。 「破獣にやられたのが二名、重傷が五名ほど、昏睡が一人。崩落で、洞穴に残ってた戦闘員は、皆逝っちまいましたわ」 俺に託した、槍術士の顔が忘れられない。あの男は、俺を主君とあおいで、ホクナの未来を心から望んだんだ。 「彼らを弔おう。俺はホクナ式を知らないから、あんたらのやり方を教えてくれ」 「合点でさ!」 劾が得意気に拳で胸を叩く。 「それが終わったら、次は、ジャオウだ」 07/13-夜色 「ホクナの夜色は、それはそれは綺麗でしたわあ」 夜を迎えた空の下、破獣にやられたひと、瓦礫の下から何とか引き出せたひとを、火にくべた。立ち上る煙を見上げながら、劾さんが、ぽつり、呟く。 「わたしも、見たかった、な。時雨の故郷」 「姫さんにも見て欲しかったですわあ。ジャオウの都にも負けん、豪華絢爛な夜でな」 時雨の隣で、膝を抱えると、劾さんが髭面を、くしゃくしゃにして、笑った。 救えなかった。癒しの力、持ってるのに。この炎に消えたひと、沢山、いる。わたしを守ってくれた、槍術士さんは、見つからなかった、って。 悔しい、すごく、悔しいよ。顔を伏せた。 07/14-帰還 「お姫さん、そんなに落ち込むんじゃあないよ」 いつの間にか、隣にいた、アナベラさんが、ぽんぽんと、わたしの背中を叩く。 「あんたとアタシ達のおかげで、ホクナの希望が帰還したんだと思いな。どうやら連中、湿っぽいのは嫌いらしいよ」 言われて、アナベラさんの視線を、追う。時雨とエクセルが、ホクナの人達に囲まれて、お酒、飲まされてる。 あの。だいじょぶ、かな。 エクセルって、 『飲み過ぎると翌朝五分くらい記憶が飛んで、自我を戻すのに手間なんだよな』 って、ぼやいてたこと、ある。 弟だから、時雨も、そんなこと、あるのかな? 考えたら、なんか笑えてきた。 07/15-追放 「そういえば」 にこにこ、時雨たちを見守っていたら、アナベラさんが、急に声を低めて、囁いてきた。 「ホクナを追放されて、ゼノスのもとに逃げ込んだ奴がいるって、劾から聞いたんだよ」 どきり、と。心臓が脈打つ。 そういえば、ラグナールにいた頃。あのひとの怖さを、見抜いて、早々に降ったひとたち、けっこう、いた。ラグナール人じゃないひとも、いた。 あのひとたちは、ラグナールにつけば、自分の野望、叶うって、勘違いしてた。 あのひとは、普通じゃなくなってた、けど、コウモリを許すほど、狂ってはいなかった。 裏切り者は、みんな、みんな。破獣になったんだ。 07/16-亡霊 『ラグナール王城には巨人の亡霊が出る』 まことしやかに、飛び交った、噂。 噂、なんかじゃ、ない。 破獣にされたひとたちが、城から飛び立つのを、夜に見た誰かの、言葉。 わたしは、なにも、できなかった。 『ティアナ。もうすぐノルンは、いや、アルファズルは、私たち二人のものになるよ』 両手を広げて、空をあおいで、恍惚とした表情で、あのひとは、語ってた。 わたしに、じゃない。 いつまでも、そのうつろな瞳の先にいる、ティアナの亡霊に、向けて。 知ってる、よ。 ティアナが、悲しそうな顔、してたの。 あれは、本物の、ティアナの亡霊なんだ。 07/17-供養 気づいた時には、見えてた。あのひとを哀しげに見つめる、わたしにそっくりな、わたしと色の違う、あの子。ティアナ。 始祖種エリオンなのに、わたしは、亡霊と話せない。あの子の本音、知ることができない。 でも、その顔が、語ってた。 自分のせいで、おかしくなっちゃった、大好きなお兄さんを、止めて欲しいんだ、って。 だからわたしは、ラグナールから、あのひとから、逃げ出した。あのひとを、止めるために。 もう、言葉を尽くしても、あのひとは、止まらない。なら、言葉の代わりに、刃を振り下ろすしか、ない。 それが、唯一、ティアナを供養する方法、なんだって。 07/18-結界 「姫さん、そんなん暗い顔ぉしとると、死んだ奴らが安心して極楽に行けねえわ」 劾さんが、ぽつりと喋り出す。 「結界、言うてな。ホクナではあの世とこの世を分ける境目があるんやわ」 ホクナの死生観は、ラグナールとは、かなり違う。それは、ジャオウで育った、時雨を見てても、わかる。この辺り、文化が、ノルンでも、かなり独特。 「明るく送ることでな、連中も安心して結界を越えていけるんやわ」 言われて、ふわふわ、胸に浮かんでくる気持ちが、ある。 「じゃあ」 久しぶりに、舞の布を翻して、立ち上がる。 「舞姫が、送りますか」 にっこり笑うと、みんな、拍手してくれた。 07/19-叛逆 ホクナの人たちの前に、しずしずと、踏み出して。 ひらり、はらり。ばさり。 弔いの炎に負けない勢いで、布を翻し、わたしは、踊る。 ジャオウに叛逆して負けた人たちも。ラグナールに叛逆を望んで逝った人たちも。 どんな人たちも、ホクナの未来を、夢見ていた。 だから、願うよ。 あなたたちの魂が、迷わず天上に……ホクナの死生観では、極楽、かな。そこに、たどり着けるように。 ゆらり、ざばり。 緩急をつけて、踊る、踊る。 さっきまで、お酒を飲んで盛り上がってた人たちも。すっかり静まり返ってる。 視線の端で、時雨が微笑んで見てくれているのを、みとめた。 07/20-虚像 舞い終わって。拍手喝采が、わたしに向けられる。 国と国の関係を思えば、刃、向けられても、おかしくないのに。ホクナの人たちは、残酷なほどに、優しい。誰に、剣を突きつけるか、わかってる。 戦に関係ある、実像と虚像、区別、ついてる。 「……ありがとうな」 息を整えてると、背後から、時雨に声、かけられた。 「あんたのおかげで、胆が据わったよ」 「わたし、そんなに、役立った?」 「大いに」 歯を見せて笑う、その姿に、心臓、どきどき言う。止まれ。違った、静まれ! 「おれはホクナの先頭に立って、ジャオウも守る。虚像の英雄にはならない」 真顔で、時雨は言った。畳む #アルファズル戦記 #この大地の上で 2026.7.20(Mon) 14:16:45 ひとりごと2026年,創作,小説 edit
この進度で12/31に終わるのか!? 私もわかりません!!
前→693
次→707
07/11-百雷
恐らく、劾は主君からこれを託されただけで、中を読んでいなかったんだろう。この経緯を知っていたら、恭司様を恨んだりしていない。エクセルは……わかんねえな。実の兄だってのに、お互いを知らない期間が長すぎたせいで、あいつの頭の中がわからん。
『男女が二人いたら、何でも惚れた腫れたになると思うなよ』
サーリアでそう耳打ちされたから、本当にソフィアのことは何とも思ってないんだろうが。
「時雨!」
耳に慣れた声が、俺を現実に引き戻す。
女衆や護衛に付き添われたソフィアが、目に涙をためて駆けてきたかと思うと、思い切り飛びつかれる。百雷みたいな喝采が起きた。
07/12-昏睡
やばい。照れている場合じゃない。
「被害は?」
先頭に立つ劾に問いかけると、ソフィアが不服そうに頬を膨らませたが、今は勘弁してくれ。ホクナの上に立つ人間としてやることがある。
「破獣にやられたのが二名、重傷が五名ほど、昏睡が一人。崩落で、洞穴に残ってた戦闘員は、皆逝っちまいましたわ」
俺に託した、槍術士の顔が忘れられない。あの男は、俺を主君とあおいで、ホクナの未来を心から望んだんだ。
「彼らを弔おう。俺はホクナ式を知らないから、あんたらのやり方を教えてくれ」
「合点でさ!」
劾が得意気に拳で胸を叩く。
「それが終わったら、次は、ジャオウだ」
07/13-夜色
「ホクナの夜色は、それはそれは綺麗でしたわあ」
夜を迎えた空の下、破獣にやられたひと、瓦礫の下から何とか引き出せたひとを、火にくべた。立ち上る煙を見上げながら、劾さんが、ぽつり、呟く。
「わたしも、見たかった、な。時雨の故郷」
「姫さんにも見て欲しかったですわあ。ジャオウの都にも負けん、豪華絢爛な夜でな」
時雨の隣で、膝を抱えると、劾さんが髭面を、くしゃくしゃにして、笑った。
救えなかった。癒しの力、持ってるのに。この炎に消えたひと、沢山、いる。わたしを守ってくれた、槍術士さんは、見つからなかった、って。
悔しい、すごく、悔しいよ。顔を伏せた。
07/14-帰還
「お姫さん、そんなに落ち込むんじゃあないよ」
いつの間にか、隣にいた、アナベラさんが、ぽんぽんと、わたしの背中を叩く。
「あんたとアタシ達のおかげで、ホクナの希望が帰還したんだと思いな。どうやら連中、湿っぽいのは嫌いらしいよ」
言われて、アナベラさんの視線を、追う。時雨とエクセルが、ホクナの人達に囲まれて、お酒、飲まされてる。
あの。だいじょぶ、かな。
エクセルって、
『飲み過ぎると翌朝五分くらい記憶が飛んで、自我を戻すのに手間なんだよな』
って、ぼやいてたこと、ある。
弟だから、時雨も、そんなこと、あるのかな?
考えたら、なんか笑えてきた。
07/15-追放
「そういえば」
にこにこ、時雨たちを見守っていたら、アナベラさんが、急に声を低めて、囁いてきた。
「ホクナを追放されて、ゼノスのもとに逃げ込んだ奴がいるって、劾から聞いたんだよ」
どきり、と。心臓が脈打つ。
そういえば、ラグナールにいた頃。あのひとの怖さを、見抜いて、早々に降ったひとたち、けっこう、いた。ラグナール人じゃないひとも、いた。
あのひとたちは、ラグナールにつけば、自分の野望、叶うって、勘違いしてた。
あのひとは、普通じゃなくなってた、けど、コウモリを許すほど、狂ってはいなかった。
裏切り者は、みんな、みんな。破獣になったんだ。
07/16-亡霊
『ラグナール王城には巨人の亡霊が出る』
まことしやかに、飛び交った、噂。
噂、なんかじゃ、ない。
破獣にされたひとたちが、城から飛び立つのを、夜に見た誰かの、言葉。
わたしは、なにも、できなかった。
『ティアナ。もうすぐノルンは、いや、アルファズルは、私たち二人のものになるよ』
両手を広げて、空をあおいで、恍惚とした表情で、あのひとは、語ってた。
わたしに、じゃない。
いつまでも、そのうつろな瞳の先にいる、ティアナの亡霊に、向けて。
知ってる、よ。
ティアナが、悲しそうな顔、してたの。
あれは、本物の、ティアナの亡霊なんだ。
07/17-供養
気づいた時には、見えてた。あのひとを哀しげに見つめる、わたしにそっくりな、わたしと色の違う、あの子。ティアナ。
始祖種エリオンなのに、わたしは、亡霊と話せない。あの子の本音、知ることができない。
でも、その顔が、語ってた。
自分のせいで、おかしくなっちゃった、大好きなお兄さんを、止めて欲しいんだ、って。
だからわたしは、ラグナールから、あのひとから、逃げ出した。あのひとを、止めるために。
もう、言葉を尽くしても、あのひとは、止まらない。なら、言葉の代わりに、刃を振り下ろすしか、ない。
それが、唯一、ティアナを供養する方法、なんだって。
07/18-結界
「姫さん、そんなん暗い顔ぉしとると、死んだ奴らが安心して極楽に行けねえわ」
劾さんが、ぽつりと喋り出す。
「結界、言うてな。ホクナではあの世とこの世を分ける境目があるんやわ」
ホクナの死生観は、ラグナールとは、かなり違う。それは、ジャオウで育った、時雨を見てても、わかる。この辺り、文化が、ノルンでも、かなり独特。
「明るく送ることでな、連中も安心して結界を越えていけるんやわ」
言われて、ふわふわ、胸に浮かんでくる気持ちが、ある。
「じゃあ」
久しぶりに、舞の布を翻して、立ち上がる。
「舞姫が、送りますか」
にっこり笑うと、みんな、拍手してくれた。
07/19-叛逆
ホクナの人たちの前に、しずしずと、踏み出して。
ひらり、はらり。ばさり。
弔いの炎に負けない勢いで、布を翻し、わたしは、踊る。
ジャオウに叛逆して負けた人たちも。ラグナールに叛逆を望んで逝った人たちも。
どんな人たちも、ホクナの未来を、夢見ていた。
だから、願うよ。
あなたたちの魂が、迷わず天上に……ホクナの死生観では、極楽、かな。そこに、たどり着けるように。
ゆらり、ざばり。
緩急をつけて、踊る、踊る。
さっきまで、お酒を飲んで盛り上がってた人たちも。すっかり静まり返ってる。
視線の端で、時雨が微笑んで見てくれているのを、みとめた。
07/20-虚像
舞い終わって。拍手喝采が、わたしに向けられる。
国と国の関係を思えば、刃、向けられても、おかしくないのに。ホクナの人たちは、残酷なほどに、優しい。誰に、剣を突きつけるか、わかってる。
戦に関係ある、実像と虚像、区別、ついてる。
「……ありがとうな」
息を整えてると、背後から、時雨に声、かけられた。
「あんたのおかげで、胆が据わったよ」
「わたし、そんなに、役立った?」
「大いに」
歯を見せて笑う、その姿に、心臓、どきどき言う。止まれ。違った、静まれ!
「おれはホクナの先頭に立って、ジャオウも守る。虚像の英雄にはならない」
真顔で、時雨は言った。畳む
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