#語彙トレ2026 『この大地の上で』06/01-06/10まとめです。 行き当たりばったりで書くからおかしくなるんだよォ!! 前→678 次→683 続きを読む06/01-傀儡 「わかってるな?」 エクセルが俺の隣に並んで、耳打ちする。 「こいつは傀儡だ。本体は別の場所にいる」 薄々、そうだろうとは思った。自由自在に姿を変える。首を落とされても死なない。なら、傀儡士が近くに潜んでいる可能性は高い。 ああ、傀儡か。嫌なことを思い出すな。 『元老院』の言葉を真に受けて、細が恭司様の仇だと国を飛び出した俺も、奴らにとって都合の良い傀儡だった。 だけど。『星辰』を握り直す。 真実を知った俺は、もう操り人形じゃあない。 国に帰って、『元老院』を一人残らず始末するまで、死ねない。 こんな奴にかかずらってる暇なんか、無いんだ。 06/02-彷徨 これは短期決戦だ。うろうろ彷徨う訳にはいかない。 エクセル、こいつの隙の無さはわかるが、いかんせん得物が心許ない。致死の毒針でも持っているなら話は別だが。 考えを巡らせて、ふと、昔恭司様が酒の肴に話した武勇伝を思い出した。 『でなぁ、そいつは傀儡をいくつも操ってたが、致命的な弱点があったわけだぁ!』 ぐらんぐらん揺れながら、大声で語る恭司様に、俺も細も苦笑を向けた。 だが、あれがただのホラじゃないなら。 「ソフィア」 不安気に成り行きを見守っていた彼女に告げる。 「目を瞑ってろ」 そう言うが速いか、廊下にうずくまる影に『星辰』を振り下ろした。 06/03-矮小 廊下の隅にうずくまっていた、矮小な影が呻き声をあげる。細い手足は、昼間会った時のままだ。 「貴様……どうして……」 痩せ細った顔が睨み上げてくる。今更同情の余地なんて無い。冷めた目で見下ろす。 「大方、強い奴を取り込んで、自分の力にするために、武術大会に誘ってたんだろう」 指摘すれば、アルマは、血を吐きながら憎々しげに唇を歪めた。 「弟妹を養うために、ラグナールに魂を売ったか」 「生きるためだ! 仕方無かったんだ!」 胸を貫かれても叫ぶあたり、人の理を既に超えているのかもしれない。 なら、終わらせるべきだ。 『星辰』を引き抜き、再度振りかぶって。 06/04-搦め手 本体を倒した『転生のホロウ』の操り人形は、床の染みになって消えた。人形の傍にいないと操れないのが、奴の搦め手だったのだろう。 「あのひと、こんな小さい、子まで」 朝が来る前に共同墓地に葬った。孤児ひとりいなくなったところで、この都市では騒ぎにならないだろうが、これは俺達のけじめだ。 「残された弟妹を、どうにかしてくるわ」 ここまで付き合ってくれたエクセルが、踵を返して墓地を去る。 「そういえば」 目の端を指で拭ったソフィアが、ふと見上げてきた。 「昼間、エクセルに、何、言われたの?」 『今言うことなんかそれ!?』 思わずジャオウ語が出た。 06/05-潜熱 それは、共同墓地から離れて。 「やっぱり、そういうことだよなあ」 青年の隻眼が、崩れかけた小屋の中で鋭く光る。 「ニイチャン、ニイチャン」 「キテクレタ」 「オレノタメニ、オレノタメニ」 アルマの弟妹がいるはずの小屋の中には、いくつもの『なり損なった』『「転生」のホロウ』の残骸が、ぐずぐずと蠢いていた。 無言でマントの下から、数本の針を取り出す。闇を裂いて投げられた針は、ひととしての急所を過たず貫き、水が潜熱で水蒸気になるように、『なり損ない』は、あっという間に気化して消えた。 「……ラグナールのクズが」 拳を握り締め、歯を食いしばった。 06/06-混沌 混沌、みたいなひと、だった。 にこにこ笑っていた、かと思えば、烈火のごとく怒り出して、首を落とせ、と命じる。 なに、考えてるか、わからない。親衛隊も、いつ、自分に災難が降りかかるか、ビクビク、してる。 『ティアナ。お前のために、誕生会を開こう』 そう言って用意された、あかいケーキ。飾られた『もの』を見て、逃げ出して、吐いた。 たぶん、自分でも、なに、やりたいのか、わからない、んだろうな。 可哀想、とも思う。 だから、国を出た。 あのひとの混沌が、ノルンを覆い尽くす前に、あのひとを止められるよう、みんなが、一致団結、しないとって。 06/07-断絶 サーリアを発とうと、街門に行ったら。 「よ」 エクセルが、軽い調子で、手を振ってた。あー。時雨、居心地悪そう。 「ジャオウに向かうんだろ? 俺も用がある」 「仲良く旅は道連れってか?」 「そう噛みつくなっての」 半眼になる時雨にも、エクセルは、怯まない。まあ、そういうひと、だよね。 「草原諸国を陥としたラグナールは、次はジャオウを攻める。都市同盟に進む上で、障害でしかないからな」 時雨の横顔が、こわばった。 「お前だって、故郷の歴史を断絶させられたくないだろ。ひとり戦力が増えると思って、俺を使え」 エクセルが、苦笑して、肩をすくめた。 06/08-残骸 「ところでお前ら、徒歩でジャオウに向かおうとか、呑気なこと考えてるんじゃないだろうな」 エクセルに言われて、時雨と顔を見合わせる。あまり、深く考えて、なかった。 「あんたら、ジャオウに行きたいのかい? 隊商を捕まえるにも、難しいよ」 その時、脇を通った馬車の女性が、声をかけてきた。 「どいつもこいつも、道中、ラグナールに追われてね。商品は奪われるか、残骸になったよ」 蓮っ葉な口をきく、背の高い、商人ぽい、女の人だった。 「それでも、行かないとならない」 時雨が、女の人に、訴えかける。 けど。 「兄さん、あんまり甘い考えするんじゃないよ」 06/09-追従 「アタシら商売人は、儲けのあるところに行くから生き延びてんだ。ラグナールの次の標的にお追従するつもりはさらさら無いね」 女の人は、両手を掲げて、ため息、ひとつ。時雨が、悔しそうに、拳、握り締めた。 わかってる。商人は、損得でしか、動かない。いくら戦がお金を動かすからって、負け色濃いほうにつく意味なんて、無い。 けど。 「なら、ジャオウに勝機があれば、あんたは俺達を運んでくれるか?」 エクセルが、腕組みして、女の人を、見据えた。 「俺にはホクナの生き残りに伝手がある。そいつらを動かせば、ジャオウ死守も夢じゃあない」 時雨が、心底驚いてる顔をした。 06/10-転位 「兄さん、法螺吹きも大概にしなよ」 女の人が、歯を見せて、笑う。 「ホクナ国はジャオウに滅ぼされたろ。なんでジャオウを守るんだい」 「ホクナ人は、抑圧されてきた。上に立つ奴が出てくれば、連中の感情は転位する」 エクセルは、時雨のほうを見て。指差して。 「ジャオウの皇本恭司が、ホクナ国主、源家の生き残りを酔狂で育ててたのは、ホクナ人には有名な話だ。知らないのは本人だけでな」 『な!?』 時雨が、びっくりして、目を見開く。あ、本当に、知らなかったんだ、これ。 エクセルは、裏はかくけど、嘘はつかない。 ああ。時雨も、「背負って」いたんだ。畳む #アルファズル戦記 #この大地の上で 2026.6.14(Sun) 09:55:02 創作,小説 edit
行き当たりばったりで書くからおかしくなるんだよォ!!
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次→683
06/01-傀儡
「わかってるな?」
エクセルが俺の隣に並んで、耳打ちする。
「こいつは傀儡だ。本体は別の場所にいる」
薄々、そうだろうとは思った。自由自在に姿を変える。首を落とされても死なない。なら、傀儡士が近くに潜んでいる可能性は高い。
ああ、傀儡か。嫌なことを思い出すな。
『元老院』の言葉を真に受けて、細が恭司様の仇だと国を飛び出した俺も、奴らにとって都合の良い傀儡だった。
だけど。『星辰』を握り直す。
真実を知った俺は、もう操り人形じゃあない。
国に帰って、『元老院』を一人残らず始末するまで、死ねない。
こんな奴にかかずらってる暇なんか、無いんだ。
06/02-彷徨
これは短期決戦だ。うろうろ彷徨う訳にはいかない。
エクセル、こいつの隙の無さはわかるが、いかんせん得物が心許ない。致死の毒針でも持っているなら話は別だが。
考えを巡らせて、ふと、昔恭司様が酒の肴に話した武勇伝を思い出した。
『でなぁ、そいつは傀儡をいくつも操ってたが、致命的な弱点があったわけだぁ!』
ぐらんぐらん揺れながら、大声で語る恭司様に、俺も細も苦笑を向けた。
だが、あれがただのホラじゃないなら。
「ソフィア」
不安気に成り行きを見守っていた彼女に告げる。
「目を瞑ってろ」
そう言うが速いか、廊下にうずくまる影に『星辰』を振り下ろした。
06/03-矮小
廊下の隅にうずくまっていた、矮小な影が呻き声をあげる。細い手足は、昼間会った時のままだ。
「貴様……どうして……」
痩せ細った顔が睨み上げてくる。今更同情の余地なんて無い。冷めた目で見下ろす。
「大方、強い奴を取り込んで、自分の力にするために、武術大会に誘ってたんだろう」
指摘すれば、アルマは、血を吐きながら憎々しげに唇を歪めた。
「弟妹を養うために、ラグナールに魂を売ったか」
「生きるためだ! 仕方無かったんだ!」
胸を貫かれても叫ぶあたり、人の理を既に超えているのかもしれない。
なら、終わらせるべきだ。
『星辰』を引き抜き、再度振りかぶって。
06/04-搦め手
本体を倒した『転生のホロウ』の操り人形は、床の染みになって消えた。人形の傍にいないと操れないのが、奴の搦め手だったのだろう。
「あのひと、こんな小さい、子まで」
朝が来る前に共同墓地に葬った。孤児ひとりいなくなったところで、この都市では騒ぎにならないだろうが、これは俺達のけじめだ。
「残された弟妹を、どうにかしてくるわ」
ここまで付き合ってくれたエクセルが、踵を返して墓地を去る。
「そういえば」
目の端を指で拭ったソフィアが、ふと見上げてきた。
「昼間、エクセルに、何、言われたの?」
『今言うことなんかそれ!?』
思わずジャオウ語が出た。
06/05-潜熱
それは、共同墓地から離れて。
「やっぱり、そういうことだよなあ」
青年の隻眼が、崩れかけた小屋の中で鋭く光る。
「ニイチャン、ニイチャン」
「キテクレタ」
「オレノタメニ、オレノタメニ」
アルマの弟妹がいるはずの小屋の中には、いくつもの『なり損なった』『「転生」のホロウ』の残骸が、ぐずぐずと蠢いていた。
無言でマントの下から、数本の針を取り出す。闇を裂いて投げられた針は、ひととしての急所を過たず貫き、水が潜熱で水蒸気になるように、『なり損ない』は、あっという間に気化して消えた。
「……ラグナールのクズが」
拳を握り締め、歯を食いしばった。
06/06-混沌
混沌、みたいなひと、だった。
にこにこ笑っていた、かと思えば、烈火のごとく怒り出して、首を落とせ、と命じる。
なに、考えてるか、わからない。親衛隊も、いつ、自分に災難が降りかかるか、ビクビク、してる。
『ティアナ。お前のために、誕生会を開こう』
そう言って用意された、あかいケーキ。飾られた『もの』を見て、逃げ出して、吐いた。
たぶん、自分でも、なに、やりたいのか、わからない、んだろうな。
可哀想、とも思う。
だから、国を出た。
あのひとの混沌が、ノルンを覆い尽くす前に、あのひとを止められるよう、みんなが、一致団結、しないとって。
06/07-断絶
サーリアを発とうと、街門に行ったら。
「よ」
エクセルが、軽い調子で、手を振ってた。あー。時雨、居心地悪そう。
「ジャオウに向かうんだろ? 俺も用がある」
「仲良く旅は道連れってか?」
「そう噛みつくなっての」
半眼になる時雨にも、エクセルは、怯まない。まあ、そういうひと、だよね。
「草原諸国を陥としたラグナールは、次はジャオウを攻める。都市同盟に進む上で、障害でしかないからな」
時雨の横顔が、こわばった。
「お前だって、故郷の歴史を断絶させられたくないだろ。ひとり戦力が増えると思って、俺を使え」
エクセルが、苦笑して、肩をすくめた。
06/08-残骸
「ところでお前ら、徒歩でジャオウに向かおうとか、呑気なこと考えてるんじゃないだろうな」
エクセルに言われて、時雨と顔を見合わせる。あまり、深く考えて、なかった。
「あんたら、ジャオウに行きたいのかい? 隊商を捕まえるにも、難しいよ」
その時、脇を通った馬車の女性が、声をかけてきた。
「どいつもこいつも、道中、ラグナールに追われてね。商品は奪われるか、残骸になったよ」
蓮っ葉な口をきく、背の高い、商人ぽい、女の人だった。
「それでも、行かないとならない」
時雨が、女の人に、訴えかける。
けど。
「兄さん、あんまり甘い考えするんじゃないよ」
06/09-追従
「アタシら商売人は、儲けのあるところに行くから生き延びてんだ。ラグナールの次の標的にお追従するつもりはさらさら無いね」
女の人は、両手を掲げて、ため息、ひとつ。時雨が、悔しそうに、拳、握り締めた。
わかってる。商人は、損得でしか、動かない。いくら戦がお金を動かすからって、負け色濃いほうにつく意味なんて、無い。
けど。
「なら、ジャオウに勝機があれば、あんたは俺達を運んでくれるか?」
エクセルが、腕組みして、女の人を、見据えた。
「俺にはホクナの生き残りに伝手がある。そいつらを動かせば、ジャオウ死守も夢じゃあない」
時雨が、心底驚いてる顔をした。
06/10-転位
「兄さん、法螺吹きも大概にしなよ」
女の人が、歯を見せて、笑う。
「ホクナ国はジャオウに滅ぼされたろ。なんでジャオウを守るんだい」
「ホクナ人は、抑圧されてきた。上に立つ奴が出てくれば、連中の感情は転位する」
エクセルは、時雨のほうを見て。指差して。
「ジャオウの皇本恭司が、ホクナ国主、源家の生き残りを酔狂で育ててたのは、ホクナ人には有名な話だ。知らないのは本人だけでな」
『な!?』
時雨が、びっくりして、目を見開く。あ、本当に、知らなかったんだ、これ。
エクセルは、裏はかくけど、嘘はつかない。
ああ。時雨も、「背負って」いたんだ。畳む
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