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七月のなまけもの
七月のなまけもの

No.680

#語彙トレ2026 『この大地の上で』06/01-06/10まとめです。
行き当たりばったりで書くからおかしくなるんだよォ!!

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06/01-傀儡
「わかってるな?」
 エクセルが俺の隣に並んで、耳打ちする。
「こいつは傀儡だ。本体は別の場所にいる」
 薄々、そうだろうとは思った。自由自在に姿を変える。首を落とされても死なない。なら、傀儡士が近くに潜んでいる可能性は高い。
 ああ、傀儡か。嫌なことを思い出すな。
『元老院』の言葉を真に受けて、細が恭司様の仇だと国を飛び出した俺も、奴らにとって都合の良い傀儡だった。
 だけど。『星辰』を握り直す。
 真実を知った俺は、もう操り人形じゃあない。
 国に帰って、『元老院』を一人残らず始末するまで、死ねない。
 こんな奴にかかずらってる暇なんか、無いんだ。

06/02-彷徨
 これは短期決戦だ。うろうろ彷徨う訳にはいかない。
 エクセル、こいつの隙の無さはわかるが、いかんせん得物が心許ない。致死の毒針でも持っているなら話は別だが。
 考えを巡らせて、ふと、昔恭司様が酒の肴に話した武勇伝を思い出した。
『でなぁ、そいつは傀儡をいくつも操ってたが、致命的な弱点があったわけだぁ!』
 ぐらんぐらん揺れながら、大声で語る恭司様に、俺も細も苦笑を向けた。
 だが、あれがただのホラじゃないなら。
「ソフィア」
 不安気に成り行きを見守っていた彼女に告げる。
「目を瞑ってろ」
 そう言うが速いか、廊下にうずくまる影に『星辰』を振り下ろした。

06/03-矮小
 廊下の隅にうずくまっていた、矮小な影が呻き声をあげる。細い手足は、昼間会った時のままだ。
「貴様……どうして……」
 痩せ細った顔が睨み上げてくる。今更同情の余地なんて無い。冷めた目で見下ろす。
「大方、強い奴を取り込んで、自分の力にするために、武術大会に誘ってたんだろう」
 指摘すれば、アルマは、血を吐きながら憎々しげに唇を歪めた。
「弟妹を養うために、ラグナールに魂を売ったか」
「生きるためだ! 仕方無かったんだ!」
 胸を貫かれても叫ぶあたり、人の理を既に超えているのかもしれない。
 なら、終わらせるべきだ。
『星辰』を引き抜き、再度振りかぶって。

06/04-搦め手
 本体を倒した『転生のホロウ』の操り人形は、床の染みになって消えた。人形の傍にいないと操れないのが、奴の搦め手だったのだろう。
「あのひと、こんな小さい、子まで」
 朝が来る前に共同墓地に葬った。孤児ひとりいなくなったところで、この都市では騒ぎにならないだろうが、これは俺達のけじめだ。
「残された弟妹を、どうにかしてくるわ」
 ここまで付き合ってくれたエクセルが、踵を返して墓地を去る。
「そういえば」
 目の端を指で拭ったソフィアが、ふと見上げてきた。
「昼間、エクセルに、何、言われたの?」
『今言うことなんかそれ!?』
 思わずジャオウ語が出た。

06/05-潜熱
 それは、共同墓地から離れて。

「やっぱり、そういうことだよなあ」
 青年の隻眼が、崩れかけた小屋の中で鋭く光る。
「ニイチャン、ニイチャン」
「キテクレタ」
「オレノタメニ、オレノタメニ」
 アルマの弟妹がいるはずの小屋の中には、いくつもの『なり損なった』『「転生」のホロウ』の残骸が、ぐずぐずと蠢いていた。
 無言でマントの下から、数本の針を取り出す。闇を裂いて投げられた針は、ひととしての急所を過たず貫き、水が潜熱で水蒸気になるように、『なり損ない』は、あっという間に気化して消えた。
「……ラグナールのクズが」
 拳を握り締め、歯を食いしばった。

06/06-混沌
 混沌、みたいなひと、だった。
 にこにこ笑っていた、かと思えば、烈火のごとく怒り出して、首を落とせ、と命じる。
 なに、考えてるか、わからない。親衛隊も、いつ、自分に災難が降りかかるか、ビクビク、してる。
『ティアナ。お前のために、誕生会を開こう』
 そう言って用意された、あかいケーキ。飾られた『もの』を見て、逃げ出して、吐いた。
 たぶん、自分でも、なに、やりたいのか、わからない、んだろうな。
 可哀想、とも思う。
 だから、国を出た。
 あのひとの混沌が、ノルンを覆い尽くす前に、あのひとを止められるよう、みんなが、一致団結、しないとって。

06/07-断絶
 サーリアを発とうと、街門に行ったら。
「よ」
 エクセルが、軽い調子で、手を振ってた。あー。時雨、居心地悪そう。
「ジャオウに向かうんだろ? 俺も用がある」
「仲良く旅は道連れってか?」
「そう噛みつくなっての」
 半眼になる時雨にも、エクセルは、怯まない。まあ、そういうひと、だよね。
「草原諸国を陥としたラグナールは、次はジャオウを攻める。都市同盟に進む上で、障害でしかないからな」
 時雨の横顔が、こわばった。
「お前だって、故郷の歴史を断絶させられたくないだろ。ひとり戦力が増えると思って、俺を使え」
 エクセルが、苦笑して、肩をすくめた。

06/08-残骸
「ところでお前ら、徒歩でジャオウに向かおうとか、呑気なこと考えてるんじゃないだろうな」
 エクセルに言われて、時雨と顔を見合わせる。あまり、深く考えて、なかった。
「あんたら、ジャオウに行きたいのかい? 隊商を捕まえるにも、難しいよ」
 その時、脇を通った馬車の女性が、声をかけてきた。
「どいつもこいつも、道中、ラグナールに追われてね。商品は奪われるか、残骸になったよ」
 蓮っ葉な口をきく、背の高い、商人ぽい、女の人だった。
「それでも、行かないとならない」
 時雨が、女の人に、訴えかける。
 けど。
「兄さん、あんまり甘い考えするんじゃないよ」

06/09-追従
「アタシら商売人は、儲けのあるところに行くから生き延びてんだ。ラグナールの次の標的にお追従するつもりはさらさら無いね」
 女の人は、両手を掲げて、ため息、ひとつ。時雨が、悔しそうに、拳、握り締めた。
 わかってる。商人は、損得でしか、動かない。いくら戦がお金を動かすからって、負け色濃いほうにつく意味なんて、無い。
 けど。
「なら、ジャオウに勝機があれば、あんたは俺達を運んでくれるか?」
 エクセルが、腕組みして、女の人を、見据えた。
「俺にはホクナの生き残りに伝手がある。そいつらを動かせば、ジャオウ死守も夢じゃあない」
 時雨が、心底驚いてる顔をした。

06/10-転位
「兄さん、法螺吹きも大概にしなよ」
 女の人が、歯を見せて、笑う。
「ホクナ国はジャオウに滅ぼされたろ。なんでジャオウを守るんだい」
「ホクナ人は、抑圧されてきた。上に立つ奴が出てくれば、連中の感情は転位する」
 エクセルは、時雨のほうを見て。指差して。
「ジャオウの皇本恭司が、ホクナ国主、源家の生き残りを酔狂で育ててたのは、ホクナ人には有名な話だ。知らないのは本人だけでな」
『な!?』
 時雨が、びっくりして、目を見開く。あ、本当に、知らなかったんだ、これ。
 エクセルは、裏はかくけど、嘘はつかない。
 ああ。時雨も、「背負って」いたんだ。畳む


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