2026年7月の投稿(時系列順)[7件]
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2026年7月3日 この範囲を新しい順で読む この範囲をファイルに出力する
#語彙トレ2026 『この大地の上で』06/21~06/30分をまとめました。
上手く10日で一区切りつかなくなってきたな……って顔をしてます! 12/31に完結しないんじゃないの!? とも思ってます!
前→683
次→693
06/21-衝動
衝動的に出た言葉だった。こいつらも『元老院』みたいに、俺が役に立つから使い潰して、その死は尊いものだったって、おいおい泣き真似してみせるんだろうって、怒りがあった。
だのに。
「何おっしゃんですか、時雨様!」
劾が目を見開いて、俺をがくがく揺さぶる。
「おら達は、時雨様と秋霖様の為なら、なんぼでも命張る覚悟できとります! 勿論、時雨様達が死ぬなっておっしゃんなら、死なない戦い方すんですがな! なあ、おまいら!?」
劾に応じて、男達が拳を突き上げて雄叫びあげる。
「って訳だ」
エクセルが、ぽんとこちらの肩に手を置いた。
「観念して腹くくれ、弟」
06/22-虚脱
天然の洞穴が、ホクナの民の隠れ家だった。入口に隊商の馬車を停めて、武器防具が降ろされると、戦う連中は歓声をあげて受け取った。
「ノルン共通貨で払ってくれるなんて、気が利くねえ」
「今のご時世についてかにゃ、生きてけねえことくらい、わかってら」
アナベラと劾がしたり顔を交わし合う。
そんな様子を、俺は虚脱しきって近くの椅子に座りながら眺めている。
ああ、やっちまった。人の上に立つなんて、柄じゃないのに。恭司様の下で『星辰』を振るうのが似合ってたのに。
「時雨」
溜息をついたところに、ソフィアが杯ふたつ持って、心配げに見下ろしながら声をかけてきた。
06/23-焼損
「だいじょぶ?」
「……正直、あまり大丈夫じゃあない」
差し出された杯を受け取り、口をつける。ホクナ特産の果実を使った、酸味ある飲み物だ。覚えている。いや、思い出したんだ。
生家の屋敷の庭にも、この果実の木があった。恐らく、ホクナが制圧されたその日に、炎に呑まれて焼損してしまったろうが。
「無理、しなくて、いいよ」
ソフィアが傍らに腰掛けて、杯を手で包む。
「エクセルの素性は、わたしも、知らなかったし。傭兵だって言うから、国を出るの、手伝ってもらったの」
長い睫毛を伏せて、らしくない憂鬱そうな表情を見せる。
こんな顔をさせたのは、俺のせいだ。
06/24-焦土
「あいつも、穏やかじゃあない人生を送ってきただろうな」
焦土から、恭司様に連れられて行った俺と、焦土に残されたあいつ。どちらが生きるのに必死だったかなんて、考えるまでも無い。
だけど、まだあいつを「兄さん」と呼ぶ勇気が出ない。俺はやっぱりまだ、恭司様の息子で、細の弟で、『星の忍』なんだ。顔を伏せると。
「どんなに、なっても」
ソフィアの声が、心地よく耳に滑り込んできた。
「時雨は時雨、だよ。優しい、わたしの大切なひと」
……は?
なんだそれ。深い意味あるのか?
耳まで真っ赤になるのを自覚する。やべえ。顔を上げられないぞこれ。
06/25-戦慄
「おい、大変やぞ!」
弛みかけた空気を緊迫させるかのように、切羽詰まったホクナの民の声が、洞穴内に響いた。
「破獣や! 十はおる!」
たちまちその場にいる連中に戦慄が走る。
「劾じいさん! おめえが油断するから!」
「ホクナじゃねえ商人なんか呼び込むから!」
喧々囂々、責任の押し付け合いが起きる。
俺は、だん! と杯を卓に叩きつけて、立ち上がった。
『そげん事で仲間割れしてる場合じゃねえだろ! それこそラグナールの狙いだって、気づかねえのか!?』
掴み合いになりそうだった連中が、しんと黙る。
『戦える奴は戦え! 自信無え奴はすっこんでろ!』
06/26-燦然
びっくり、して。
時雨を見上げた。
「アナベラから武器を受け取った奴はついてこい。俺は破獣とは一度しか戦ったことが無いから、戦法を教えてくれる奴がついていてくれると助かる。万一の為に、非戦闘員は脱出路近くに避難させるんだ」
てきぱきと指示を下す姿は、まるで燦然と輝く太陽みたいで、ほんとに、彼がひとの上に立つひと、なんだな、って痛感する。
ホクナ国主の跡取り。ジャオウの次期太守の養子。ひとを導く資格は、じゅうぶん、あったんだ。
「あんたも避難しろよ」
こんな時まで、わたしの心配、して。
こんな時なのに、嬉しくなっちゃって。
笑顔で、頷いた。
06/27-凶兆
武器を手に、洞穴の外へ走り出ていった、時雨達の背中を見送りながら、胸に手を、当てる。
『これはラグナール皇国にとって吉兆にございます』
檻の中で、餓えて。自分達すら喰らい合う、破獣を、あのひとに見せながら嗤う、あかい瞳と、銀に見える髪の、背の高い、男のひと。
『もっとも、他国にとっては、滅びの凶兆でしょうが』
それを、聞いてるのか聞いてないのか、あのひとは、満足そうに、笑んで、見てた。
破獣を生み出した、男のひとは、いつの間にか、消えた。でも、破獣は増え続ける。
ラグナール兵を、素体にして。
あのひとが、増やし続けた。
06/28-暴走
時雨が、ホクナの人達の先頭に立って、洞穴を出ていった。こんな時、待つしかできない自分が、悔しい。
「大丈夫やで、お嬢さん。いや、姫さん」
護衛に残った、槍術士のおじさんが、背中、撫でてくれる。
「あんさんがラグナールの姫なのは、わかっちょる。でも、ゼノスの野郎とちゃうのも、わかっちょる」
彼の目線を、追う。怯え、怒り、不信、戸惑い。色んな目が、わたしを見てる。
「憎むはゼノスだ。姫さんとちゃう」
ああ、このおじさんは。わざと大きい声で言うことで、残った人達が、暴走して、わたしに何かしないよう、気を遣ってくれてるんだ。
まるで、時雨みたいに。
06/29-処世
「時雨様がおっ死にかけた時、助けてくれたんも、姫さんやろ?」
槍術士のおじさんは、滔々と、語る。
「世間知らずみたいな顔しとんのも、ゼノスの関係者って疑われんための、処世術だったんやろなあ。苦労したろうなあ」
おじさんの言葉に、周りの人達の視線に込めた感情、変わってくのが、わかる。
なんで、人は、争うんだろう。こうして、優しい人、いるのに。話せばわかり合えること、沢山、あるのに。
膝の上で、拳を、握り締める。その時。
「おい! 治癒士呼んでくれ! やられた!」
外で戦っていたはずの人が、血にまみれた、同胞を背に負って、駆け込んできた。
06/30-暗渠
きっと、唇を引き締めて、立ち上がる。
「わたしが、できます」
胡乱な顔を向ける、そのひとに構わず、怪我をしたひとを横たえさせる。
わたしの、エリオンの力。それが、光となってこぼれ落ちて。顔から胸まで、破獣の爪に引き裂かれて、ずたずただったひとの、傷を癒してゆく。
「お嬢さん、あんた」
アナベラさんも、驚いてる。そう、だよね。魔法の詠唱も無しに、怪我、治すなんて。しかも、ラグナールの、人間が。
ううん。人間であるかも、怪しい。暗渠に住み着く、怪物みたいに、見えてるんだろうな。
うつむくと。
「ああ……」
死にかけていたひとが、口を開いた。畳む
#アルファズル戦記
#この大地の上で
上手く10日で一区切りつかなくなってきたな……って顔をしてます! 12/31に完結しないんじゃないの!? とも思ってます!
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06/21-衝動
衝動的に出た言葉だった。こいつらも『元老院』みたいに、俺が役に立つから使い潰して、その死は尊いものだったって、おいおい泣き真似してみせるんだろうって、怒りがあった。
だのに。
「何おっしゃんですか、時雨様!」
劾が目を見開いて、俺をがくがく揺さぶる。
「おら達は、時雨様と秋霖様の為なら、なんぼでも命張る覚悟できとります! 勿論、時雨様達が死ぬなっておっしゃんなら、死なない戦い方すんですがな! なあ、おまいら!?」
劾に応じて、男達が拳を突き上げて雄叫びあげる。
「って訳だ」
エクセルが、ぽんとこちらの肩に手を置いた。
「観念して腹くくれ、弟」
06/22-虚脱
天然の洞穴が、ホクナの民の隠れ家だった。入口に隊商の馬車を停めて、武器防具が降ろされると、戦う連中は歓声をあげて受け取った。
「ノルン共通貨で払ってくれるなんて、気が利くねえ」
「今のご時世についてかにゃ、生きてけねえことくらい、わかってら」
アナベラと劾がしたり顔を交わし合う。
そんな様子を、俺は虚脱しきって近くの椅子に座りながら眺めている。
ああ、やっちまった。人の上に立つなんて、柄じゃないのに。恭司様の下で『星辰』を振るうのが似合ってたのに。
「時雨」
溜息をついたところに、ソフィアが杯ふたつ持って、心配げに見下ろしながら声をかけてきた。
06/23-焼損
「だいじょぶ?」
「……正直、あまり大丈夫じゃあない」
差し出された杯を受け取り、口をつける。ホクナ特産の果実を使った、酸味ある飲み物だ。覚えている。いや、思い出したんだ。
生家の屋敷の庭にも、この果実の木があった。恐らく、ホクナが制圧されたその日に、炎に呑まれて焼損してしまったろうが。
「無理、しなくて、いいよ」
ソフィアが傍らに腰掛けて、杯を手で包む。
「エクセルの素性は、わたしも、知らなかったし。傭兵だって言うから、国を出るの、手伝ってもらったの」
長い睫毛を伏せて、らしくない憂鬱そうな表情を見せる。
こんな顔をさせたのは、俺のせいだ。
06/24-焦土
「あいつも、穏やかじゃあない人生を送ってきただろうな」
焦土から、恭司様に連れられて行った俺と、焦土に残されたあいつ。どちらが生きるのに必死だったかなんて、考えるまでも無い。
だけど、まだあいつを「兄さん」と呼ぶ勇気が出ない。俺はやっぱりまだ、恭司様の息子で、細の弟で、『星の忍』なんだ。顔を伏せると。
「どんなに、なっても」
ソフィアの声が、心地よく耳に滑り込んできた。
「時雨は時雨、だよ。優しい、わたしの大切なひと」
……は?
なんだそれ。深い意味あるのか?
耳まで真っ赤になるのを自覚する。やべえ。顔を上げられないぞこれ。
06/25-戦慄
「おい、大変やぞ!」
弛みかけた空気を緊迫させるかのように、切羽詰まったホクナの民の声が、洞穴内に響いた。
「破獣や! 十はおる!」
たちまちその場にいる連中に戦慄が走る。
「劾じいさん! おめえが油断するから!」
「ホクナじゃねえ商人なんか呼び込むから!」
喧々囂々、責任の押し付け合いが起きる。
俺は、だん! と杯を卓に叩きつけて、立ち上がった。
『そげん事で仲間割れしてる場合じゃねえだろ! それこそラグナールの狙いだって、気づかねえのか!?』
掴み合いになりそうだった連中が、しんと黙る。
『戦える奴は戦え! 自信無え奴はすっこんでろ!』
06/26-燦然
びっくり、して。
時雨を見上げた。
「アナベラから武器を受け取った奴はついてこい。俺は破獣とは一度しか戦ったことが無いから、戦法を教えてくれる奴がついていてくれると助かる。万一の為に、非戦闘員は脱出路近くに避難させるんだ」
てきぱきと指示を下す姿は、まるで燦然と輝く太陽みたいで、ほんとに、彼がひとの上に立つひと、なんだな、って痛感する。
ホクナ国主の跡取り。ジャオウの次期太守の養子。ひとを導く資格は、じゅうぶん、あったんだ。
「あんたも避難しろよ」
こんな時まで、わたしの心配、して。
こんな時なのに、嬉しくなっちゃって。
笑顔で、頷いた。
06/27-凶兆
武器を手に、洞穴の外へ走り出ていった、時雨達の背中を見送りながら、胸に手を、当てる。
『これはラグナール皇国にとって吉兆にございます』
檻の中で、餓えて。自分達すら喰らい合う、破獣を、あのひとに見せながら嗤う、あかい瞳と、銀に見える髪の、背の高い、男のひと。
『もっとも、他国にとっては、滅びの凶兆でしょうが』
それを、聞いてるのか聞いてないのか、あのひとは、満足そうに、笑んで、見てた。
破獣を生み出した、男のひとは、いつの間にか、消えた。でも、破獣は増え続ける。
ラグナール兵を、素体にして。
あのひとが、増やし続けた。
06/28-暴走
時雨が、ホクナの人達の先頭に立って、洞穴を出ていった。こんな時、待つしかできない自分が、悔しい。
「大丈夫やで、お嬢さん。いや、姫さん」
護衛に残った、槍術士のおじさんが、背中、撫でてくれる。
「あんさんがラグナールの姫なのは、わかっちょる。でも、ゼノスの野郎とちゃうのも、わかっちょる」
彼の目線を、追う。怯え、怒り、不信、戸惑い。色んな目が、わたしを見てる。
「憎むはゼノスだ。姫さんとちゃう」
ああ、このおじさんは。わざと大きい声で言うことで、残った人達が、暴走して、わたしに何かしないよう、気を遣ってくれてるんだ。
まるで、時雨みたいに。
06/29-処世
「時雨様がおっ死にかけた時、助けてくれたんも、姫さんやろ?」
槍術士のおじさんは、滔々と、語る。
「世間知らずみたいな顔しとんのも、ゼノスの関係者って疑われんための、処世術だったんやろなあ。苦労したろうなあ」
おじさんの言葉に、周りの人達の視線に込めた感情、変わってくのが、わかる。
なんで、人は、争うんだろう。こうして、優しい人、いるのに。話せばわかり合えること、沢山、あるのに。
膝の上で、拳を、握り締める。その時。
「おい! 治癒士呼んでくれ! やられた!」
外で戦っていたはずの人が、血にまみれた、同胞を背に負って、駆け込んできた。
06/30-暗渠
きっと、唇を引き締めて、立ち上がる。
「わたしが、できます」
胡乱な顔を向ける、そのひとに構わず、怪我をしたひとを横たえさせる。
わたしの、エリオンの力。それが、光となってこぼれ落ちて。顔から胸まで、破獣の爪に引き裂かれて、ずたずただったひとの、傷を癒してゆく。
「お嬢さん、あんた」
アナベラさんも、驚いてる。そう、だよね。魔法の詠唱も無しに、怪我、治すなんて。しかも、ラグナールの、人間が。
ううん。人間であるかも、怪しい。暗渠に住み着く、怪物みたいに、見えてるんだろうな。
うつむくと。
「ああ……」
死にかけていたひとが、口を開いた。畳む
#アルファズル戦記
#この大地の上で
2026年7月4日 この範囲を新しい順で読む この範囲をファイルに出力する
ゲーム進撃の巨人3のPVを見て思ったこと。(原作既読)
なんかちょいちょいファイアーエムブレム風花雪月っぽい質問とかプレゼントとかあるな……と思ったら、納得のコエテクさんでした。
そこで思ったのが、エレンと仲を深めると、風花雪月のエーデルガルトみたいに、原作通りエレンを討つか、それともエレンを救うというか、地鳴らしに協力して主人公も討たれるか、ルート分岐が隠れてるんじゃないのか? ってとこですよね。
道徳0点の風花雪月作ったから、あり得そうで怖い。
たぶん立体起動で酔うので、人様のプレイ動画が出たら、見てみたいなー。畳む
なんかちょいちょいファイアーエムブレム風花雪月っぽい質問とかプレゼントとかあるな……と思ったら、納得のコエテクさんでした。
そこで思ったのが、エレンと仲を深めると、風花雪月のエーデルガルトみたいに、原作通りエレンを討つか、それともエレンを救うというか、地鳴らしに協力して主人公も討たれるか、ルート分岐が隠れてるんじゃないのか? ってとこですよね。
道徳0点の風花雪月作ったから、あり得そうで怖い。
たぶん立体起動で酔うので、人様のプレイ動画が出たら、見てみたいなー。畳む
2026年7月5日 この範囲を新しい順で読む この範囲をファイルに出力する
テスト前の部屋の大掃除状態です。
体調回復が最優先事項なのに、書きたい案がぽこぽこ出てくる。
とりあえず、素案としてメモしておこうと思います!
体調回復が最優先事項なのに、書きたい案がぽこぽこ出てくる。
とりあえず、素案としてメモしておこうと思います!
2026年7月6日 この範囲を新しい順で読む この範囲をファイルに出力する
今週のケントゥリア
暗森先生、諫山先生と同じタイプですか? 好きなキャラほど苦しめたい???
ルカがめちゃくちゃ苦戦してて、でもまた新しい奥の手出してきて、でもボロッボロで、これ、アトリアちゃんがルカを生かすためにここで死ぬ確率が爆上がりしましたよ!?
イケメンは苦しめたい、珍獣もわかる。
だけど、最推しが最終回まで生き残れないだろって可能性が常にチラつくのは、心臓に悪い……。ラクリマちゃん早く来てー!!畳む
暗森先生、諫山先生と同じタイプですか? 好きなキャラほど苦しめたい???
ルカがめちゃくちゃ苦戦してて、でもまた新しい奥の手出してきて、でもボロッボロで、これ、アトリアちゃんがルカを生かすためにここで死ぬ確率が爆上がりしましたよ!?
イケメンは苦しめたい、珍獣もわかる。
だけど、最推しが最終回まで生き残れないだろって可能性が常にチラつくのは、心臓に悪い……。ラクリマちゃん早く来てー!!畳む
2026年7月11日 この範囲を新しい順で読む この範囲をファイルに出力する
#語彙トレ2026 『この大地の上で』07/01~07/10分をまとめました。
前→689
07/01-崩落
「ありがとな……お姫さん」
まだ、血は拭き取れてないけど、死にかけだったひとが、笑いかけてくれる。
「あんたは、時雨様と一緒に来てくれた、救い主だあよ」
周りの空気、和らぐのが、わかる。
「……そうや。国なんか関係ねえ」
「疑って悪かった」
少しずつ、ひとが集まって。決まり悪そうに、微笑む。
うん、そうだよね。話せばわかり合えるよね。壊れてしまったあのひとを、止める方法、あるよね。
「ありがとう」
笑い返した、その時。
微震がして、皆が、きょろきょろする。震動、大きくなる。
「崩落や!!」
誰かが叫ぶと同時、洞穴の天井が、崩れた。
07/02-渇水
洞穴の外には、渇水によって干上がった窪地があった。そこに破獣を誘き寄せる。
「時雨様ぁ!」
劾が銅鑼声をあげた。
「破獣は首落とすのが一番確実ですわ!」
そうして手で首をかき斬る仕草をしてみせる。
「わかった」
青竜刀『星辰』を手にし、舞い降りてくる褐色の異形に向かい合う。
振り下ろされた鋭い爪持つ腕を、地面を蹴ってかわし、ばねのように跳ねて飛び込む。『星辰』を振り抜けば、鬼のような首が飛んで、蒸気を吹き上げながら消滅してゆく。
「おああ!」
誰かの悲鳴が聞こえる。
「怪我した奴は下がれ! 誰も死ぬな!」
檄を飛ばせば、応、と返ってきた。
07/03-真紅
真紅の血が舞う。
破獣に翻弄されて、爪と牙の前に、倒れてゆく奴がいる。
「あまり周りに気を取られるなよ!」
背後から毒針を投げて援護してくれるエクセルが、注意を飛ばしてきた。
「連中は、お前の為に命を張ってるんだ。そこにかかずらってお前が倒れたら、ホクナの生命線まで切れるからな!」
奴の言う事は正しい。もう、俺一人の命じゃあなくなった。ジャオウとホクナ、両方の命運がかかってる。『星辰』を握り直した時。
窪地の一部が、破獣の重みに耐えきれなかった。ホクナの戦士を何人か巻き込んで、崩落する。
あの下にいる、碧い瞳を思って、腹の底が冷えた。
07/04-破滅
頭から血の気が引くのがわかる。誰も死ぬなと檄を飛ばしたのに、戦わない奴から破滅してゆくなんて、そんなのありか!?
「おい、待て!」
俺が何をするかわかったんだろう。エクセルの焦った声が背中にぶつかる。
『指揮はおめえでもできるじゃろ!』
思わずジャオウ語を飛ばして、陥没した穴へ飛び込む。
瓦礫に足を挟まれて動けなくなっていた女に、破獣がゆうらりと近づいてゆくのが、視界に入る。
『星辰』を構えて距離を詰め、一瞬で振り抜く。首を飛ばされた破獣が消える。
「あ、ありがとござんす、時雨様……!」
女が礼を言い、男達が瓦礫に取りつく中、目的の姿を探した。
07/05-残火
「ソフィア!」
彼女の名前を叫ぶ。頼む。返事をしてくれ。どこかで上手く瓦礫を避けていてくれ。
洞穴の中で焚いていた火が潰されて、残火の煙をあげている。破獣の蒸気と触れ合ったら、また燃え上がるかもしれない。背筋が冷えた時。
「時雨……様!」
苦しげな男声が耳に滑り込んだので、振り向く。
非戦闘員の護衛に残した槍術士が、槍と己の腕で重たげな瓦礫を支えながら、視線を足元に向けている。それにつられて見下ろし、心臓が跳ねた。
「ソフィア!」
頭を打ったのか、額から血を流しながら、ソフィアが倒れている。
「早う、姫さんを助けてやってくだせえ!」
07/06-絶望
抱き込むようにソフィアの身体を抱えて、瓦礫の下から引きずり出す。足くらい折れてるんじゃあないかって危惧したが、額の血以外は目立った外傷は無い。最悪の絶望からは逃れられた。
「あんたも。早く出てこい」
ずっと支えていてくれた男に声をかける。だが、彼は首を横に振った。
「時雨様。わいがここで手を離したら、時雨様たちごと巻き込んで、この辺全部潰れますわ。だから」
黒い瞳が、切望を込めて俺を見る。
「わいが支えられているうちに、生きてる連中連れて、逃げてくださいや」
「そんな、馬鹿なことを!」
声を荒げても、相手の意志は変わらないようだった。
07/07-蝉時雨
『ざけんな! 誰も死ぬな言うたんだ! おめえも死なせるか!』
もうどうしようもないことは、頭のどこかで理解しているのに、ジャオウ語でわめいてしまう。
『時雨は、気に食わんことがあるとシャーシャー蝉みたいにわめきたててなあ。蝉時雨じゃぞ』
子どもの頃、俺が聞き分けないと、恭司様が困った顔をして頭を撫でてくれたのを、今更思い出す。
「時雨様」男が笑う。「絶対、ホクナを再興してくださいや」
ぐっと拳を握り締めてうつむき。顔を上げて。
「あんたの忠義を、無駄にはしない。ホクナは生き返る」
満足そうに目を細める相手から視線をはがし、ソフィアを抱えて離れた。
07/08-秘帖
外に飛び出した瞬間、洞穴は轟音を立てて崩れきった。護衛に残した連中が命を張ってくれたおかげで、殆どの者が生き残った。
だが、『殆ど』だ。『全員』じゃあない。外で戦っていた中にも、傷を負った奴がいる。
ソフィアを女衆に託して、独り、近くの岩場で座り込み、頭を抱える。
俺が、犠牲にしたんだ。ホクナの民に希望をちらつかせて、死地へ追いやったんだ。
「時雨様」
劾の声が背中に投げ掛けられる。エクセルがいる気配もする。
「こんなんあるだろと、おとん様が秘帖を残してくださってますわ」
のろのろ振り向けば、劾がぼろぼろの表紙の帳面を、手渡してきた。
07/09-怨嗟
一人きりで、帳面をめくる。
ホクナ国主、つまり実の父親の、個人的な記録。ほとんど日記のようなものだった。
もっとこう、民を治める苦しさとか、ジャオウとの軋轢とか、愚痴や怨嗟に満ちているのかと思ったら、全然そんなことは無い。
視察に降りて田植えを手伝ったら、ぎっくり腰になったとか。祭に交じって水を浴び笑った話とか。自分には勿体無いくらいいい嫁をもらったとか。
そんな他愛の無い話が、躍るような筆致で綴られている。
ある箇所で、手が止まる。
正室が男子を産んだ、と。
『嫡男とかしがらみにとらわれんで、思うがままに、愛される国主になって欲しいのお』
07/10-鎮魂
記録は続く。
俺や他の子供達の成長。毎年夏に、鎮魂の灯籠を川に流す儀式。その最後のページに、酷く乱れた字で、書き記されてあった。
『過激派を抑えられんかった。ホクナは滅亡する』
ホクナの反乱は父親の暴走ではなかったのだと、心のどこかで安心する。だが、その続きに目を奪われた。
『ジャオウの跡継ぎが、密かに来た。時雨の命を助けて欲しいと願うと、「んなら、俺の子として育てるさ。強く正しい男にする」と快諾してくれた』
頭を殴られた気分だった。
実父も、恭司様も、俺を息子として誠実に見ていてくれたんだ。
『……親父』
思わず背中を丸めた。畳む
#アルファズル戦記
#この大地の上で
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07/01-崩落
「ありがとな……お姫さん」
まだ、血は拭き取れてないけど、死にかけだったひとが、笑いかけてくれる。
「あんたは、時雨様と一緒に来てくれた、救い主だあよ」
周りの空気、和らぐのが、わかる。
「……そうや。国なんか関係ねえ」
「疑って悪かった」
少しずつ、ひとが集まって。決まり悪そうに、微笑む。
うん、そうだよね。話せばわかり合えるよね。壊れてしまったあのひとを、止める方法、あるよね。
「ありがとう」
笑い返した、その時。
微震がして、皆が、きょろきょろする。震動、大きくなる。
「崩落や!!」
誰かが叫ぶと同時、洞穴の天井が、崩れた。
07/02-渇水
洞穴の外には、渇水によって干上がった窪地があった。そこに破獣を誘き寄せる。
「時雨様ぁ!」
劾が銅鑼声をあげた。
「破獣は首落とすのが一番確実ですわ!」
そうして手で首をかき斬る仕草をしてみせる。
「わかった」
青竜刀『星辰』を手にし、舞い降りてくる褐色の異形に向かい合う。
振り下ろされた鋭い爪持つ腕を、地面を蹴ってかわし、ばねのように跳ねて飛び込む。『星辰』を振り抜けば、鬼のような首が飛んで、蒸気を吹き上げながら消滅してゆく。
「おああ!」
誰かの悲鳴が聞こえる。
「怪我した奴は下がれ! 誰も死ぬな!」
檄を飛ばせば、応、と返ってきた。
07/03-真紅
真紅の血が舞う。
破獣に翻弄されて、爪と牙の前に、倒れてゆく奴がいる。
「あまり周りに気を取られるなよ!」
背後から毒針を投げて援護してくれるエクセルが、注意を飛ばしてきた。
「連中は、お前の為に命を張ってるんだ。そこにかかずらってお前が倒れたら、ホクナの生命線まで切れるからな!」
奴の言う事は正しい。もう、俺一人の命じゃあなくなった。ジャオウとホクナ、両方の命運がかかってる。『星辰』を握り直した時。
窪地の一部が、破獣の重みに耐えきれなかった。ホクナの戦士を何人か巻き込んで、崩落する。
あの下にいる、碧い瞳を思って、腹の底が冷えた。
07/04-破滅
頭から血の気が引くのがわかる。誰も死ぬなと檄を飛ばしたのに、戦わない奴から破滅してゆくなんて、そんなのありか!?
「おい、待て!」
俺が何をするかわかったんだろう。エクセルの焦った声が背中にぶつかる。
『指揮はおめえでもできるじゃろ!』
思わずジャオウ語を飛ばして、陥没した穴へ飛び込む。
瓦礫に足を挟まれて動けなくなっていた女に、破獣がゆうらりと近づいてゆくのが、視界に入る。
『星辰』を構えて距離を詰め、一瞬で振り抜く。首を飛ばされた破獣が消える。
「あ、ありがとござんす、時雨様……!」
女が礼を言い、男達が瓦礫に取りつく中、目的の姿を探した。
07/05-残火
「ソフィア!」
彼女の名前を叫ぶ。頼む。返事をしてくれ。どこかで上手く瓦礫を避けていてくれ。
洞穴の中で焚いていた火が潰されて、残火の煙をあげている。破獣の蒸気と触れ合ったら、また燃え上がるかもしれない。背筋が冷えた時。
「時雨……様!」
苦しげな男声が耳に滑り込んだので、振り向く。
非戦闘員の護衛に残した槍術士が、槍と己の腕で重たげな瓦礫を支えながら、視線を足元に向けている。それにつられて見下ろし、心臓が跳ねた。
「ソフィア!」
頭を打ったのか、額から血を流しながら、ソフィアが倒れている。
「早う、姫さんを助けてやってくだせえ!」
07/06-絶望
抱き込むようにソフィアの身体を抱えて、瓦礫の下から引きずり出す。足くらい折れてるんじゃあないかって危惧したが、額の血以外は目立った外傷は無い。最悪の絶望からは逃れられた。
「あんたも。早く出てこい」
ずっと支えていてくれた男に声をかける。だが、彼は首を横に振った。
「時雨様。わいがここで手を離したら、時雨様たちごと巻き込んで、この辺全部潰れますわ。だから」
黒い瞳が、切望を込めて俺を見る。
「わいが支えられているうちに、生きてる連中連れて、逃げてくださいや」
「そんな、馬鹿なことを!」
声を荒げても、相手の意志は変わらないようだった。
07/07-蝉時雨
『ざけんな! 誰も死ぬな言うたんだ! おめえも死なせるか!』
もうどうしようもないことは、頭のどこかで理解しているのに、ジャオウ語でわめいてしまう。
『時雨は、気に食わんことがあるとシャーシャー蝉みたいにわめきたててなあ。蝉時雨じゃぞ』
子どもの頃、俺が聞き分けないと、恭司様が困った顔をして頭を撫でてくれたのを、今更思い出す。
「時雨様」男が笑う。「絶対、ホクナを再興してくださいや」
ぐっと拳を握り締めてうつむき。顔を上げて。
「あんたの忠義を、無駄にはしない。ホクナは生き返る」
満足そうに目を細める相手から視線をはがし、ソフィアを抱えて離れた。
07/08-秘帖
外に飛び出した瞬間、洞穴は轟音を立てて崩れきった。護衛に残した連中が命を張ってくれたおかげで、殆どの者が生き残った。
だが、『殆ど』だ。『全員』じゃあない。外で戦っていた中にも、傷を負った奴がいる。
ソフィアを女衆に託して、独り、近くの岩場で座り込み、頭を抱える。
俺が、犠牲にしたんだ。ホクナの民に希望をちらつかせて、死地へ追いやったんだ。
「時雨様」
劾の声が背中に投げ掛けられる。エクセルがいる気配もする。
「こんなんあるだろと、おとん様が秘帖を残してくださってますわ」
のろのろ振り向けば、劾がぼろぼろの表紙の帳面を、手渡してきた。
07/09-怨嗟
一人きりで、帳面をめくる。
ホクナ国主、つまり実の父親の、個人的な記録。ほとんど日記のようなものだった。
もっとこう、民を治める苦しさとか、ジャオウとの軋轢とか、愚痴や怨嗟に満ちているのかと思ったら、全然そんなことは無い。
視察に降りて田植えを手伝ったら、ぎっくり腰になったとか。祭に交じって水を浴び笑った話とか。自分には勿体無いくらいいい嫁をもらったとか。
そんな他愛の無い話が、躍るような筆致で綴られている。
ある箇所で、手が止まる。
正室が男子を産んだ、と。
『嫡男とかしがらみにとらわれんで、思うがままに、愛される国主になって欲しいのお』
07/10-鎮魂
記録は続く。
俺や他の子供達の成長。毎年夏に、鎮魂の灯籠を川に流す儀式。その最後のページに、酷く乱れた字で、書き記されてあった。
『過激派を抑えられんかった。ホクナは滅亡する』
ホクナの反乱は父親の暴走ではなかったのだと、心のどこかで安心する。だが、その続きに目を奪われた。
『ジャオウの跡継ぎが、密かに来た。時雨の命を助けて欲しいと願うと、「んなら、俺の子として育てるさ。強く正しい男にする」と快諾してくれた』
頭を殴られた気分だった。
実父も、恭司様も、俺を息子として誠実に見ていてくれたんだ。
『……親父』
思わず背中を丸めた。畳む
#アルファズル戦記
#この大地の上で
2026年7月13日 この範囲を新しい順で読む この範囲をファイルに出力する
今年は(も?)、カクヨムで連載します。
『アルファズル断片集31題 2026』
です。
リメイク本編が去年完結した、狭義の『アルファズル戦記』、西の大陸編ですが、番外編を出しきっていない、という心残りがずっとありました。
いつか異聞録2を出せるように、今回の31題で、書ける限り下敷きを作ってしまおうと思います。
ただ、メニエール病が全く快方に向かわないので、当日にお題文を出せない日があると思います。
極力がんばります! でも終わるのが冬とかになったらすみません!!
#アルファズル戦記