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七月のなまけもの
七月のなまけもの

2026年の投稿114件]

2026年6月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

#語彙トレ2026 『この大地の上で』06/01-06/10まとめです。
行き当たりばったりで書くからおかしくなるんだよォ!!

前→678

06/01-傀儡
「わかってるな?」
 エクセルが俺の隣に並んで、耳打ちする。
「こいつは傀儡だ。本体は別の場所にいる」
 薄々、そうだろうとは思った。自由自在に姿を変える。首を落とされても死なない。なら、傀儡士が近くに潜んでいる可能性は高い。
 ああ、傀儡か。嫌なことを思い出すな。
『元老院』の言葉を真に受けて、細が恭司様の仇だと国を飛び出した俺も、奴らにとって都合の良い傀儡だった。
 だけど。『星辰』を握り直す。
 真実を知った俺は、もう操り人形じゃあない。
 国に帰って、『元老院』を一人残らず始末するまで、死ねない。
 こんな奴にかかずらってる暇なんか、無いんだ。

06/02-彷徨
 これは短期決戦だ。うろうろ彷徨う訳にはいかない。
 エクセル、こいつの隙の無さはわかるが、いかんせん得物が心許ない。致死の毒針でも持っているなら話は別だが。
 考えを巡らせて、ふと、昔恭司様が酒の肴に話した武勇伝を思い出した。
『でなぁ、そいつは傀儡をいくつも操ってたが、致命的な弱点があったわけだぁ!』
 ぐらんぐらん揺れながら、大声で語る恭司様に、俺も細も苦笑を向けた。
 だが、あれがただのホラじゃないなら。
「ソフィア」
 不安気に成り行きを見守っていた彼女に告げる。
「目を瞑ってろ」
 そう言うが速いか、廊下にうずくまる影に『星辰』を振り下ろした。

06/03-矮小
 廊下の隅にうずくまっていた、矮小な影が呻き声をあげる。細い手足は、昼間会った時のままだ。
「貴様……どうして……」
 痩せ細った顔が睨み上げてくる。今更同情の余地なんて無い。冷めた目で見下ろす。
「大方、強い奴を取り込んで、自分の力にするために、武術大会に誘ってたんだろう」
 指摘すれば、アルマは、血を吐きながら憎々しげに唇を歪めた。
「弟妹を養うために、ラグナールに魂を売ったか」
「生きるためだ! 仕方無かったんだ!」
 胸を貫かれても叫ぶあたり、人の理を既に超えているのかもしれない。
 なら、終わらせるべきだ。
『星辰』を引き抜き、再度振りかぶって。

06/04-搦め手
 本体を倒した『転生のホロウ』の操り人形は、床の染みになって消えた。人形の傍にいないと操れないのが、奴の搦め手だったのだろう。
「あのひと、こんな小さい、子まで」
 朝が来る前に共同墓地に葬った。孤児ひとりいなくなったところで、この都市では騒ぎにならないだろうが、これは俺達のけじめだ。
「残された弟妹を、どうにかしてくるわ」
 ここまで付き合ってくれたエクセルが、踵を返して墓地を去る。
「そういえば」
 目の端を指で拭ったソフィアが、ふと見上げてきた。
「昼間、エクセルに、何、言われたの?」
『今言うことなんかそれ!?』
 思わずジャオウ語が出た。

06/05-潜熱
 それは、共同墓地から離れて。

「やっぱり、そういうことだよなあ」
 青年の隻眼が、崩れかけた小屋の中で鋭く光る。
「ニイチャン、ニイチャン」
「キテクレタ」
「オレノタメニ、オレノタメニ」
 アルマの弟妹がいるはずの小屋の中には、いくつもの『なり損なった』『「転生」のホロウ』の残骸が、ぐずぐずと蠢いていた。
 無言でマントの下から、数本の針を取り出す。闇を裂いて投げられた針は、ひととしての急所を過たず貫き、水が潜熱で水蒸気になるように、『なり損ない』は、あっという間に気化して消えた。
「……ラグナールのクズが」
 拳を握り締め、歯を食いしばった。

06/06-混沌
 混沌、みたいなひと、だった。
 にこにこ笑っていた、かと思えば、烈火のごとく怒り出して、首を落とせ、と命じる。
 なに、考えてるか、わからない。親衛隊も、いつ、自分に災難が降りかかるか、ビクビク、してる。
『ティアナ。お前のために、誕生会を開こう』
 そう言って用意された、あかいケーキ。飾られた『もの』を見て、逃げ出して、吐いた。
 たぶん、自分でも、なに、やりたいのか、わからない、んだろうな。
 可哀想、とも思う。
 だから、国を出た。
 あのひとの混沌が、ノルンを覆い尽くす前に、あのひとを止められるよう、みんなが、一致団結、しないとって。

06/07-断絶
 サーリアを発とうと、街門に行ったら。
「よ」
 エクセルが、軽い調子で、手を振ってた。あー。時雨、居心地悪そう。
「ジャオウに向かうんだろ? 俺も用がある」
「仲良く旅は道連れってか?」
「そう噛みつくなっての」
 半眼になる時雨にも、エクセルは、怯まない。まあ、そういうひと、だよね。
「草原諸国を陥としたラグナールは、次はジャオウを攻める。都市同盟に進む上で、障害でしかないからな」
 時雨の横顔が、こわばった。
「お前だって、故郷の歴史を断絶させられたくないだろ。ひとり戦力が増えると思って、俺を使え」
 エクセルが、苦笑して、肩をすくめた。

06/08-残骸
「ところでお前ら、徒歩でジャオウに向かおうとか、呑気なこと考えてるんじゃないだろうな」
 エクセルに言われて、時雨と顔を見合わせる。あまり、深く考えて、なかった。
「あんたら、ジャオウに行きたいのかい? 隊商を捕まえるにも、難しいよ」
 その時、脇を通った馬車の女性が、声をかけてきた。
「どいつもこいつも、道中、ラグナールに追われてね。商品は奪われるか、残骸になったよ」
 蓮っ葉な口をきく、背の高い、商人ぽい、女の人だった。
「それでも、行かないとならない」
 時雨が、女の人に、訴えかける。
 けど。
「兄さん、あんまり甘い考えするんじゃないよ」

06/09-追従
「アタシら商売人は、儲けのあるところに行くから生き延びてんだ。ラグナールの次の標的にお追従するつもりはさらさら無いね」
 女の人は、両手を掲げて、ため息、ひとつ。時雨が、悔しそうに、拳、握り締めた。
 わかってる。商人は、損得でしか、動かない。いくら戦がお金を動かすからって、負け色濃いほうにつく意味なんて、無い。
 けど。
「なら、ジャオウに勝機があれば、あんたは俺達を運んでくれるか?」
 エクセルが、腕組みして、女の人を、見据えた。
「俺にはホクナの生き残りに伝手がある。そいつらを動かせば、ジャオウ死守も夢じゃあない」
 時雨が、心底驚いてる顔をした。

06/10-転位
「兄さん、法螺吹きも大概にしなよ」
 女の人が、歯を見せて、笑う。
「ホクナ国はジャオウに滅ぼされたろ。なんでジャオウを守るんだい」
「ホクナ人は、抑圧されてきた。上に立つ奴が出てくれば、連中の感情は転位する」
 エクセルは、時雨のほうを見て。指差して。
「ジャオウの皇本恭司が、ホクナ国主、源家の生き残りを酔狂で育ててたのは、ホクナ人には有名な話だ。知らないのは本人だけでな」
『な!?』
 時雨が、びっくりして、目を見開く。あ、本当に、知らなかったんだ、これ。
 エクセルは、裏はかくけど、嘘はつかない。
 ああ。時雨も、「背負って」いたんだ。畳む


#アルファズル戦記
#この大地の上で

創作,小説

ウワアアアアア耳が! 耳が!!
ずっとこもってる! 考えがまとまらない!! メニエール前兆!!
本命就活本番の週に、なんてこったい!!
金曜日も医者行ったけど、悪化の一途を辿っているので、明日も予約入れました。
たぶんまあ、「失敗できない」って緊張が呼び起こしたんだろうけど、あんまりだー!!

#生きる

日記,ひとりごと2026年

#語彙トレ2026 『この大地の上で』05/21~05/31まとめです。

前→676
次→680

前日の内容すら覚えてないから、矛盾が生じているところが多々ありますね!!
長編に直す時に全部辻褄合わせます!!

05/21-夕凪
 雨が、小降りになって。あかい、太陽が、雲間から顔を見せる。
「やんだな」
 夕凪みたいに静まり返った空を、時雨が見上げる。
「アルマ……あのガキも迎えにいってやらないといけないか。あまり気は進まないけど、引き受けたもんは最後までやるのが、ジャオウの忍だ」
「そういうとこ、真面目、なんだよねえ、時雨」
「あんたがけしかけたんだぞ」
「まあ、まあ、ごめんって」
 笑い合いながら。空から、前に視線を向けて。
 手が、自然に、離れて。
 わたしたちは、歩き出す。
 雨が過ぎれば、手を離す。わたしたちは、そういう仲。
 時雨も、使命が終われば、さよなら、なんだ。

05/22-可憐
 武術大会受付で、エクセルは、律儀に待っててくれた。アルマも、いっしょ。独りにできなかった、んだろうなあ。そういうお人好しなとこ、時雨に、似てる。
 そう、思ったとこで、ふと、時雨と、エクセルを、見比べる。
 似て、ない?
 所作とか、性格だけじゃなくて、顔とか。
「おんや、こんな可憐な姉ちゃんが、こんなむさいところにご用事かい?」
 思考を、断ち切るように。明らかに酔った声と、くさい息が吹きかかる。
「金が欲しいなら、このホロウに賭けな! 分け前はたっぷりやるよ! 俺様の言うことを聞くならな!」
 うわ、このひとが『転生のホロウ』なんだ。
 さいあく。

05/23-不穏
「おい、おっさん」
 ホロウと、わたしの、間に。時雨が、割って入る。
「ひとの連れに言い寄るの、やめてくれないか」
「あーん? なんだ、ガキが」
 ホロウが、太い眉、跳ね上げて。時雨と、睨み合う。あ、なんか、不穏な雰囲気。
「まあまあ、落ち着けよ。ふたりとも」
 一触即発のところに、エクセルが、にこにこ笑いながら、声をかける。
「それこそ、武術大会で決着つけりゃ、いい話だろ」
 ホロウが、なんか、青い顔した。
「お前ら、その顔、覚えとくぞ」
 舌打ちしながら、立ち去る。
 時雨が、苦い顔して、エクセルを、もとい、その手に隠し持った、針を見た。

05/24-虚ろ
「あんた、抜け目が無いというか、物騒だな」
 時雨が、呆れて、エクセルに向けて、肩をすくめてみせる。
「『転生の』とか言いながら『虚ろ(ホロウ)』なんて、黒歴史みたいな名前のやつに、ろくなのはいないだろうからな」
 エクセルは、にっと、笑い返して、マントの下に針をしまう。あのマント、すんごい数の、針、入ってるんだよねえ。エクセルの武器、針だから。
『剣は持てない』って、言ってたっけ。
 そのエクセルが、不意に、時雨の肩を抱いて、なんか、耳打ちする。
『お節介かおめえは!?』
 時雨が、顔を真っ赤にして、ジャオウ語で叫ぶ。
 なに、してんの。あのふたり?

05/25-葛藤
「じゃあな、ソフィア。また試合の時に」
 時雨から離れたエクセルが、ひらひら、手を振って、立ち去る。
 時雨は、といえば、なんか、葛藤してるみたいに、あたま抱えてる。
 ……と思ったら。
『言われるまでもねえんだよ』
 開き直って、顔、上げた。
「とりあえず、しばらくサーリアに滞在するなら、宿を取らないとな。夜が更けて部屋が埋まる前に行こう」
「あ、じゃあ、うち来いよ!」
 それまで、おとなしくしてた、アルマが、挙手する。
「何もないけど」
「言葉のまんまだろ」
 その頭を、時雨が、こつんと小突いた。
「ガキが大人に気を遣うな」

05/26-夏木立
「本当に、こっちが家なのか?」
「そうだよ!」
 夏木立の中に消えてゆくようにしか見えない、家なんて無さそうな景色に、微かな不安を覚える。それでも、アルマは、怖いものなんて何も無いとばかりに、胸を張るのだ。
「じゃあな、時雨兄ちゃん、ソフィア姉ちゃん! 明日、会場で!」
 元気に手を振り、アルマは走り去る。そこに一瞬、黒い影が重なったような気がして、目をこする。
 アルマの背中は遠ざかってゆくばかりだった。
 おかしい。俺に魔法の才能なんて無いのに、何を見たんだ?
「アルマに、ごはん、持たせてあげれば、よかったかなあ」
 ソフィアには、見えなかったのか?

05/27-閉門
 サーリア閉門の時間が過ぎた。これから先は、人の出入りの無い、閉じた都市内での享楽の時間だ。
 だが、誰かの人生がかかっている試合の前に、酒なんか浴びてる場合じゃない。そもそも、酒は最悪の思い出を呼び起こす。
『元老院』に叩き起こされていった時には、もう棺桶の中だった、恭司様。姿を消した細が下手人だと吹き込まれて、冷静な判断ができなくなっていた俺は、真に受けた。
 細がそんなことをする理由なんて、ひとっつも無かったのに。俺は幼稚だった。
 寝台に腰かけたまま、両手で顔を覆うと、客室の扉を叩く音がした。
「ソフィア?」
 一応訊ねるが、足音が違うな、これ。

05/28-揺藍
「兄ちゃん、おれだよ」
 アルマの声がした。
「なあ、開けてよ。妹が泣き止まなくてさ。こっちで寝かせてよ」
 揺藍の中の赤子が泣き声を立てる様子が脳裏に浮かぶ。眉間を押さえて、ゆっくりと立ち上がり、扉の鍵を開けて。

 扉が開いた瞬間、青竜刀『星辰』を振り抜いた。

 暗がりで、誰のものかわからない首が飛びながら、「はっはは!」と、野太い男の声で笑った。
「『転生』に騙されなかったのは、おまえが初めてだぜ、小僧!」
「アルマをどうした」
 廊下の暗さに目が慣れてくる。細い少女はいなくて、巨体が、離れた頭を再びくっつける。
 ああ、嫌な予感が当たりそうだ。

05/29-耽美
『やっぱり、そういうことかよ』
 思わずジャオウ語で毒づく。
『転生のホロウ』の姿はひとつではない。そして、その姿を手に入れる方法とは。
「聡い子は寿命が縮むよお?」
 アルマの姿がぐにゃりと歪み、耽美的な女の姿を取って、しなを作る。
「坊やも『もらっちゃおう』かなあ? けっこう良い男だし。強そうだし」
「ここでやり合うんじゃねえよ」
 隣の部屋にはソフィアがいる。ホロウの射程範囲にいれば、巻き込む。
「あのお嬢さんの心配をしてるのかい?」
 ホロウが、くつくつ笑う。
 ああ、俺の嫌な予感はことごとく当たるんだ。
 顔をしかめた時、隣の部屋の扉が開いた。

05/30-遮断
 最悪の事態を想定して、身を固くする俺の耳に、ソフィアじゃない声が飛び込んできた。
「ったく。ひとを便利屋みたいに使うんじゃねえよ」
「でも、時雨を助けるのに、頼りになるの、ほかに思いつかなかったから」
「それでこいつの嫉妬買ってたら、いい迷惑なんだよ」
 隻眼の男が、ホロウに針を向けている。その背後に、見慣れた水色の髪が揺れている。
 は?
 あいつに、頼った?
 俺を助けるために?
 信頼が遮断された気分だ。
「俺、そんなに信用ならないか?」
「ちがう! そんなこと、ない! 本当に心配だっただけ!」
 ソフィアはすんごい勢いで、両手と首を横に振った。

05/31-鏡像
 俺でもソフィアの部屋には入らないのに。エクセル、あの男、どこから登場するんだよ!?
 とはいえ、今はふたりを責めてる場合じゃあない。これ以上被害者が出ないように、『「転生」のホロウ』をここで仕留めないといけない。
「いい兄さんが増えたねえ」
 妖艶な女の姿でしなを作り、ホロウが笑う。あの酒臭いオヤジの姿は、仮だったのか、それともこの姿がお気に入りなのか。
「おや。よく見りゃ兄さん達、顔がそっくりじゃあないか。鏡像みたいだねえ」
 ぎょっとして、エクセルの方を向く。相手はこっちを見ず、即座にホロウに向けて短剣並みの針を投げた。
「まんまと乗るな、馬鹿が!」畳む


#アルファズル戦記
#この大地の上で

創作,小説

今週のケントゥリア

久々に、ユリアンの数の暴力見た気がするな……。逆鱗に触れた+百人分の意思強すぎる。
弱点を看破されたラクリマちゃんを、ルカ達の援護に回して、ユリアン一人で戦おうとするし、もうユリアンは覚悟ガンギマリなんですよね。
そしてユリアンに抱きついちゃうラクリマちゃんが健気!! ここまで泥人形の意志外の行動だとは思いたくない……へーレムの意図から外れ始めていると信じたい!!

それにしても、ルミルが思った以上に危険思想の国でびっくりした。ただの辺境じゃなかった……。畳む

日記,ひとりごと2026年,マンガ

2026年5月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

#語彙トレ2026 『この大地の上で』05/11~05/20まとめました。もう5月が終わろうとしているのに! 行動が遅い!
段々記憶力が悪くなって、手を繋いだり離したりまた繋いだりしてます。酷い時はお題を入れ忘れて書き直しました。

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05/11-賢哲
 ソフィアが背後を振り返る。びっくりした様子で目をまん丸くして、相手の名を呼ぶ。
「エクセル……」
 黒装束に身を包んだ男だった。顔の右半分を長い前髪で隠している。いかにも傭兵然としていて、賢哲からはほど遠そうだ。人のことは言えないが。
「なんで、ここに」
「そりゃこっちの台詞だ」
 唖然としたままのソフィアに、エクセルは肩をすくめてみせる。
「自治都市連合を説得するっていうから、連れ出してやったのに。なんでこんなむさいところにいるんだよ」
 隻眼が、こちらを向く。
「しかも、ジャオウの人間なんか連れて」
 なんか。
 なんか?
 思わずカチンときた。

#語彙トレ2026 05/12-宿痾
 ジャオウはノルンの中でも特に独特な文化を持ち、他国との交流を最低限に抑えて、孤立気味だ。それがジャオウの外からは、「変わり者の国」と侮蔑を受け、外に出たジャオウ人が差別を受ける宿痾になっている。
 おおかた、この傭兵も、そういう偏見を持って俺を見ているんだろう。じとりと睨むと。
「そう警戒するなよ、小型犬じゃあるまいに」
 男は両手を掲げて肩をすくめてみせた。小型犬とは、また馬鹿にしてくれたものだ。
「待って、時雨。エクセルは、敵じゃ、ない」
 俺の腕に、ソフィアがすがりつく。
「エクセルは、わたしが、国を出るのを、手伝ってくれたの」

#語彙トレ2026 05/13-恍惚
「ほええ~」
 アルマも感心して、エクセルと呼ばれた男を見上げている。
「兄ちゃんも、歴戦の戦士ってかんじだな~。時雨より強いんじゃない?」
 恍惚とすらした様子で口にした言葉に、さっきから感じていた苛立ちが、限界突破した。
『なら、そいつに頼めばええじゃろ!』
 ジャオウ語で叫ぶ。
「時雨?」
 ソフィアが不思議そうな顔で俺を見てくる。何で俺がキレたのか、わかっていません、という態度が怒りを煽る。
『腕前あればええんじゃろ!? もう俺に頼るな!』
 そして一人踵を返す。
「時雨!? 時雨ーっ!?」
 振り返りたくなかった。多分、酷い顔をしてるから。

#語彙トレ2026 05/14-撞着
 ずかずかと、通りを大股で歩いて、はっと正気に返る。
 俺、めちゃくちゃ格好悪くないか?
 ソフィアは俺のものじゃない。大事な使命を背負った、自律したひとりの人間だ。ましてや身代わりとはいえ、お姫様だ。俺の知らない過去や事情のひとつやふたつ、背負っていて不思議じゃあない。
 細を失った俺に、消えてしまいそうだから、と一緒に来てくれた。そんな彼女を守ろうと思った。
 それが、俺の知らないところで出会った男ひとりに嫉妬して、ああそうだ、立派な嫉妬だ、それで見捨てようとするなんて。
『おめえ、そりゃ自家撞着だぞ!』
 恭司様がいたら、そう言って大笑いしただろう。

#語彙トレ2026 05/15-昇華
 ああ、情けねえ。情けねえな、俺。
 恭司様と細が見てたら、腹抱えて爆笑するだろう。
『嫉妬は力に昇華しな』
 ひとしきり笑った後で、細ならそう言うだろう。
『……わかってら、ねえさん』
 ジャオウ語でひとりごちる。
 いきなり置いていって、ソフィアもびっくりしてるだろう。戻って、謝らないと。
 踵を返す。人の波を縫って歩く。すると、向こうから、目に馴染んだ水色の髪が近づいてきた。
「……ひとりでうろちょろするな」
「……時雨が、置いてった、せいですう」
 ぷくりと頬を膨らませる。その様子がおかしくて、もやもやしていた気持ちが、吹っ飛んでしまった。

#語彙トレ2026 05/16-釈義
 少し前。
「ソフィア、お前さ」
 時雨が、怒って立ち去った、後。
 エクセルが、なんかすごく、すごく、苦いものを食べたような顔で、わたしとアルマを、見下ろした。
「お前を好いてる男の前で、他の男の肩持つな」
「は?」
 誰が、わたしを?
 ……なんて、すっとぼけられるほど、わたしも馬鹿じゃ、ない。
 ああ、わたし、時雨に、嫉妬、させたんだ。
「なに。姉ちゃん、あの兄ちゃんとできてんの?」
「まだ! 断じて!!」
 アルマが、からかうように、見上げてきたから、思わず大きい声が出た。
 エクセルって、ほんと、鋭いんだよねえ。釈義みたいに、わたしを諭してくる。

#語彙トレ2026 05/17-鬱積
 わかる。わかるよ。
『姫様は世間のことをおわかりにならなくて、よろしいのです』
 わたしの周り、みんなみんな、そう言って、恭しく、頭下げてた。けど。
 下手なこと吹き込むと、あのひとに、首、飛ばされるから。見下して、無知の小鳥のまま、囲って。そうしていればいい、って。思ってたに、違いない。
 わたしだって、そこまで、馬鹿じゃない。怒りが鬱積して。
 だから、国を飛び出した。
 そして、ほんとにわたし、無知で無力だなって、思い知った。
 時雨がいなかったら、生きてない。
「時雨、追いかける」
 言ったら、エクセルは、ぽんぽん、頭を撫でてきた。

#語彙トレ2026 05/18-驟雨
 結局、人混みの中で、時雨に会えたけど。
 なに、言おうか。
 時雨も、ばつが悪そうに、頭かいて、黙ってる。
 どっちか、から。なにか、言わなくちゃ。ふよふよ、思考をさまよわせていると。ぽつ、とつむじに、水滴が当たって。
 ざあっ、て。
 にわか雨が降りだした。
『驟雨かよ!』
 時雨が、ジャオウ語で舌打ちして、急に、わたしの手を、握る。
「とりあえず、雨宿りするぞ!」
「う、うん!」
 慌てて家路を急ぐ、ひとたちの合間を縫って。あっという間に、道にできる、水たまりを、蹴って。
 わたしたちは、ふたりで、駆ける。
 なんか、どきどき、した。

#語彙トレ2026 05/19-湿潤
 適当な、家の軒先を、傘代わりに。
「しばらくやみそうにないな」
 夏先の湿潤もあって、しっとり濡れた、髪をかきあげながら、時雨が言う。
 わたしの心臓は、ばくばく言う。
 いえ、あの。手。
 繋いだまま、なんだな。
 気づいて、ない?
「時雨、あの」
「なんだ?」
 これは、ほんとに、無意識、なの? 見上げても、不思議そうに、見下ろしてくる。
 先をどう続けよう、か。迷っていたら。時雨は、今気づいたみたいに、ゆっくり、視線を下ろして。
『わ、悪ィ!』
 咄嗟に、ジャオウ語が飛び出しながら、手を離した。
「う、ううん」
 あー、わたし、絶対、顔、赤い。

#語彙トレ2026 05/20-眩暈
「あ、あの、ね。時雨」
 繋いだ手を、きゅっ、と握りしめて。どきどき心臓が騒ぐのを、自覚する。
「エクセルは、ほんとあの、お兄さんみたいな、もので。なんとも、思ってない、から」
 なに、言い訳してるんだろ。あ、なんか、ふわふわ、眩暈してきた。ひっくり返りそう。
「いや、俺もいきなり怒って、済まなかった」
「でも、わたし」
「いや俺が」
 堂々巡りに、なりそうになって、思わず、顔を見合わせる。
 わたしたち、ふたりとも、ぽかん、としてる。
 思わず、ふたり同時に、吹き出す。
「喧嘩両成敗ってことで」
「うん」
 雨は、意外と早く、やみそうだった。畳む


#アルファズル戦記
#この大地の上で

#雪が解けて春になる の漫画を描いたのを載せ忘れていました。
今回は終盤時間軸、シリアスです。

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語彙トレで増えた設定ですが、ヒオウの母親は、正妃の陰謀で毒殺されました。
その正妃もまた、いい加減鬱陶しくなった実の息子のヴァーリによって、毒殺されています。
英雄の国ヴィフレスト、闇が深すぎる。畳む


#アルファズル戦記

ひとりごと2026年,創作,マンガ

今週のケントゥリア

アトリアちゃんの寿命問題が解決する前に襲撃! これ、ララワグさんとアトリアちゃんがしんで、トリウィアに物資不足問題が起き、『予言の子』一行がより重罪人として追われる展開待った無しでは!?

それはおいといとて。

暗森先生、1ページまるっと使っての演出がカッケエ~~~!!
ユリアンの「今お前らは俺の逆鱗に触れてるんだぞ」は、煽りに対して積極的に使っていきたい流行語大賞ですね。(冗談です)
そして擬態を解くラクリマちゃんがきれーい! かっこいい!!
手を取り合うとか、もう夫婦じゃん! ラクリマちゃんが正ヒロインとしての地位を確立してゆくじゃん! ティティと違って、ユリアンの隣に立って戦える、という爆アドがあるのが強いんですよね。
でもラクリマちゃんは泥人形……オオオ……オオオオオ……!!(あたまを抱える)
やはり最後に残るのは、ずっと背中を見てきたティティの愛なのかな~!?畳む

日記,ひとりごと2026年,マンガ

#生きる のを楽にするためにおくすりもらったんですが、
「飲み始めは気持ち悪くなりますよ」
とは言われたけどさァ!
昨日夕ごはん後に飲んで、直球で具合が悪くなって、今まだ治らないの、これ続けられない~!!(泣き言)
でも、これ以上どうしようもないって、八方塞がりになってるので、乗り越えるしか無い……つらい……。

ひとりごと2026年

進撃の巨人を読み始めた。

いや……アニメ1期は見たんですよね。1話で捕食シーンが衝撃的すぎて最後まで見られなくて、5話くらいで突然平気になって、1期は最後まで……。

ひとの死に全部意味があるというか、1話から全て仕込まれていた、諫山先生の手腕は噂に聞いているのですが、17巻くらいの内容のところまでで止まってしまったので、マーレ編全然知らないんですよね!

という訳で、ゆるっと勉強します!

日記,ひとりごと2026年,マンガ

#雪が解けて春になる の漫画を描いて、こっちに載せるのを忘れていました。
ヒオゼファ……と思わせて、ヒオウの部下ニーザが苦労人だろうな、という1ページ漫画です。

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ニーザとマイケルのモデルは、ファイアーエムブレムの赤緑だったり、幻想水滸伝のアレンとグレンシール(よく覚えていた私!)だったりします。畳む


#アルファズル戦記

ひとりごと2026年,創作,マンガ